真相解明阻む軍主導体制 = 国民にも情報開示せず - アルジェリア人質事件 日本人 10 人を含む外国人多数が死亡したアルジェリア・イナメナスの天然ガス関連施設での人質事件をめぐり、アルジェリア国内でも「実際に何が行われたのか分からない」との声が出ている。 中東の民衆運動「アラブの春」を切り抜けたアルジェリアの軍主導の強権的な権力構造が、真相究明を困難にしている。 ◇ 政権批判は困難 首都アルジェの空港に 24 日相次いで降り立った日本人記者は「強権支配を敷いたかつてのリビアなどの独裁体制を想起させる」と口をそろえた。 カメラなどの機材検査は厳しい。 ビザが発給されたのは救出作戦の完全終了後だ。 街角に警官の姿も目立ち、自由な取材への壁は厚い。 市民は事件について「テロリストの残虐な犯行だ。 軍は救出作戦を強行せざるを得なかった。」などと、似たような話をする。 地元記者によれば、アルジェリアには国営テレビしかなく、新聞も踏み込んだ政権批判ができない。 中東の衛星テレビ局アルジャジーラの支局開設も認められず、「報道の自由」はない。 国民は情報統制下にあると言っていい。 それでもじっくり話を聞くと、「本当に何が起きたのかは分からない。 メディアも現地入りしていないし、真相は闇の中だ。」と、本心を明かす市民もいる。 ◇ 内戦のトラウマも 軍の救出作戦強行について、会社員カマルさん (37) は「国家の権力者が『われわれの権益に触れるな』と言っているのだ」とみる。 施設は国営石油・天然ガス企業ソナトラックなどが運営している。 国家の事実上の支配者である軍が権益を持つ石油・天然ガス施設への攻撃は、絶対に許さないことを示したものだという。 アルジェリアでは、フランスとの独立闘争を経て、軍部が権力を牛耳る体制が構築された。 ある識者は「拷問などで悪名の高い秘密情報機関 DRS のトゥフィク長官を頂点とした軍部が、対欧米関係の民主的な顔としてブーテフリカ大統領を担ぎ上げ、裏の支配者として石油や天然ガス資源の権益や権力を握っている」と解説する。 ある市民は「権力の腐敗や情実人事、硬直した官僚機構、経済の不公正など『アラブの春』で政権が倒れた国々と同じように、国民は不満を抱いている。 しかし、1990 年代の内戦で負ったトラウマのために、流血を伴う変革を望まない国民気質がある。」と話す。 ◇ 日本関係者を警戒 電話やインターネットは監視され、踏み込んだ政治的な話題はタブーだという。 ある人は「今回の事件に日本人が多数巻き込まれたから、当局は日本の関係者の動きには特に神経質になっている。 彼ら(治安当局)は全ての者に目を光らせている。 問題に巻き込まれたくないなら黙っていた方がいい。」と忠告した。 記者は取材対象者の身の安全に配慮し、実名報道を避けた。 (jiji = 1-26-13) フィリピン人人質「縛られた日本人見た」 「縛られた日本人を見た -。」 アルジェリア人質事件で、プラント建設大手、日揮の日本人駐在員と共に人質になっていたという英石油大手 BP のフィリピン人技術者が 25 日までに、こう証言した。 銃弾が飛び交う中を必死に逃げ、「あちこちに遺体が転がり、血のりが広がっていた」と、拘束から救出までの恐怖の体験を語った。 技術者はジョセフ・バルマセダさん (42)。 帰国し、入院中のフィリピン・バターン州の病院で共同通信の単独インタビューに応じた。 証言によると、バルマセダさんが 16 日朝、居住区から同僚と車でプラント現場に向かう際、銃声が響いた。 同僚と警備員詰め所に隠れ、銃声が収まった後、外に出た。 「アルジェリア軍だと思っていたら待ち構えていたのはテロリストだった。」 ケーブルで手足を縛られ、連行されたのは居住区の VIP 施設の前。 バルマセダさんは、近くに「同じように縛られた日本人スタッフ 6、7 人がいた」と説明。 1 人はけがを負い犯行グループから手当てを受けていた。 日本語の会話が聞こえたが、内容は分からなかったという。 そこには犯行グループ 12 人、人質約 30 人がいた。 わずかな水やビスケット、バナナを与えられた。 アラビア語を話せる人が犯行グループに「目的は何か」と尋ねたが、明かさなかった。 日が暮れた。 「家族と再会できることだけを祈った。」 夜の冷え込みは厳しく星空の下で毛布にくるまり、震えながら眠れぬ夜を過ごした。 17 日午前になって「手を挙げろ」と命じられ、施設を包囲する軍に対する「盾」になった。 午後には自分も含め 9 人が車に詰め込まれた。「日本人も少なくとも 1 人がいたはずだ。」 他の人質も別の車に乗せられた。 銃撃戦が始まった。 すさまじい爆発音の後、乗っていた車も爆発し横転、走って逃げた。 日本人がどうなったかは知らない。 遺体があちこちに見えた。 「(爆発音で)耳が聞こえなくなり、意識が遠のいた。」 気付いたら軍に救助されていた。 21 日に母国に戻り家族と再会した。 「胸や頭が痛いが、自分は幸運だった。」 ベッドの上で安堵の表情を浮かべた。 (kyodo = 1-25-13) 鳴り止まぬ銃声、ターバン巻き顔隠し脱出 … 生存者、緊迫の襲撃証言 アルジェリア人質事件で事件に巻き込まれ、無事だった日本人駐在員の証言から、襲撃時の生々しい様子が少しずつ分かってきた。 日揮の遠藤毅広報・IR 部長が 25 日午前の記者会見で明らかにした。 「ステイ ルーム!」 16 日午前 5 時 40 分ごろ(現地時間)、イナメナスのプラントの近くにあった宿舎の自室にいた男性駐在員は、サイレンが鳴り響いた直後に、マレーシア人の同僚がそう叫ぶのを耳にしたという。 イスラム過激派武装勢力が天然ガス関連施設を襲撃した瞬間だった。 「何か起きたと思った。」 男性駐在員がただならぬ雰囲気に異変を察知してまもなく、銃声が聞こえてきた。 午前 6 時半から 8 時ごろ、近くの部屋で「オープン・ザ・ドア!」という声と銃声が聞こえたが、男性駐在員は息を潜め自室にとどまり続けた。 約 1 時間後、上空を飛来するヘリコプターの音が聞こえ、「助けに来た軍隊が到着した」と思った。 だが、この日、銃声が鳴り止むことはなかった。 そのまま一夜を明かし、翌 17 日午前 9 時 45 分ごろ、自室の小窓から外をのぞき見ると、日揮のアルジェリア人スタッフの姿が見えた。 男性駐在員が話しかけたところ、セキュリティーを担当する現地スタッフから「安全確認しているから、ノックがあるまで部屋で待て」と言われたという。 部屋のドアをノックする音が聞こえ外に出ると、「必要最低限の荷物を持ち、頭にターバンを巻け」と指導された。 他の現地スタッフからは「ネックウオーマーで顔を隠せ」と言われ、現地スタッフが駐在員を取り囲みながら宿舎の外に出た。 下請け会社のキャンプに向かい、部屋の中に入り、食料と水にありつけた。 その後、警察の車でアルジェリア軍のキャンプに避難した。 その間も、外では武装勢力が攻撃している様子が見えた。 午後 3 時ごろ、同僚の日本人駐在者が車に乗っているのを見つけ、ともにイナメナスの警察署に移動。 日本にいる自分の家族に無事を連絡した。 (sankei = 1-25-13) 人質事件、残る 1 人の死亡確認 政府、犠牲者計 10 人に 菅義偉官房長官は 24 日夜、緊急記者会見し、アルジェリア人質事件で最後まで安否が不明だった日本人男性 1 人の死亡を確認したと発表した。 これで、被害に遭ったプラント建設大手・日揮(横浜市)の日本人の現地駐在員 17 人のうち犠牲者は 10 人となった。 無事だった 7 人と犠牲者 9 人の遺体は、政府専用機で 25 日午前 7 時ごろに帰国する。 菅氏は帰国を受け犠牲者 10 人の氏名を公表する方針だ。 10 人目の犠牲者の身元は指輪などの遺留品で確認した。 遺体は城内実外務政務官とともに民間機で帰国する。 安倍晋三首相は 24 日、10 人目の犠牲者の報告を受け「あまりにもひどい。 残念だ。」と述べた。 (kyodo = 1-24-13) 米、アルジェリアの対応に理解 「さらに悲劇ありえた」 【ワシントン = 望月洋嗣】 カーニー米大統領報道官は 22 日の記者会見で、アルジェリアの人質事件に関して、「犯行グループは人質全員を殺害していたかもしれない」とし、強行突入で解決を図った同国政府の対応に理解を示した。 カーニー氏は、「アルジェリア政府によれば、犯行グループはすべての人質を殺害し、現場の天然ガス関連施設を爆破していたかもしれない。 (突入がなければ)さらに悲劇的な状況になったおそれがある。」と説明。 米国人や日本人を含む多数の犠牲者が出た責任は「テロリストにある」と述べた。 一方、国防総省のリトル報道官は、今回の事件への関与が疑われる「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ (AQIM)」への報復的な攻撃について「米国だけが取り組む問題ではない」と説明。 勢力を増す AQIM に対し、国際社会と協力して「できることはすべてする」と述べた。 (asahi = 1-23-13) 人質事件の死者、少なくとも 37 人 アルジェリア首相が発表 アルジェリア南東部イナメナスの天然ガス施設で起きた人質事件で、同国のセラル首相は 21 日、死亡した人質が少なくとも 37 人に上ったことを明らかにした。 菅官房長官は同日、日本人 7 人の遺体が確認されたと発表した。 セラル首相は、死者 37 人のうち 7 人の身元が確認できず、現場では 5 人が依然として行方不明になっていると述べた。 同施設では、外国人 134 人を含む約 790 人の従業員が働いていたという。 各国政府の発表によると、死者にはアルジェリア人 1 人、米国人 3 人、英国人 3 人、フィリピン人 6 人が含まれている。 一方、犯行グループのメンバーは 29 人前後が死亡、3 人が拘束されたという。 グループは隣国マリ北部から侵入したとみられ、メンバーの出身国はアルジェリアのほかチュニジア、エジプト、マリ、ニジェール、カナダ、モーリタニアなど、計 8 カ国に及んだ。 セラル首相によると、犯行グループは 16 日、小型トラックを連ねて、リビア国境から約 50 キロの地点にある同施設を襲撃。 外国人従業員らを人質に取り、施設内に複数の爆発物を仕掛けた。 軍との交渉で仲間の釈放を要求したが、政府はこれを拒否し、特殊部隊による人質救出作戦に踏み切ったという。 犯人らが車に爆発物を積み、人質を乗せて逃走を図る場面もあった。 特殊部隊は 19 日、犯行グループが施設の爆破を計画しているとして、再び制圧作戦を実施した。 「爆破が実行されれば 5 キロ以内は全滅していただろう」と、セラル首相は振り返る。 関係国からは強硬な作戦が人質を危険にさらしたとの批判も出ているが、英国のキャメロン首相は声明で軍の対応を称賛し、「人質死亡の責任はテロリストにある」と強調した。 日本人ではプラント建設大手「日揮」の駐在員のうち 10 人の安否が不明となっていた。 日本からは外務政務官らに続き、医務官を含む専門家チームが現地入りしている。 (CNN = 1-22-13) 人質 23 人、武装勢力 32 人死亡 アルジェリア政府発表 アルジェリアの人質事件について、同国内務省は 19 日夜、3 日間にわたる作戦を終え、この間に人質 23 人、武装勢力 32 人が死亡したと発表した。 AP 通信が伝えた。 内務省は、暫定的な数字としている。 このうち最後の制圧作戦では人質 7 人、武装勢力 11 人が死亡したという。 またアルジェリア人 685 人、外国人 107 人の従業員が解放されたという。 アルジェリア軍は、機関銃やロケットランチャー、ミサイルや自殺ベルトに装着された手投げ弾などを押収した。 武装勢力は、アルジェリア人 3 人を含む多国籍の 32 人だったという。 (asahi = 1-20-13) アルジェリア人質事件、少なくとも外国人 22 人の安否不明 [アルジェ] イスラム武装勢力によるアルジェリアのガス施設での人質拘束事件をめぐり、同国軍による救出作戦が行われたが、18 日時点で少なくとも 22 人の外国人の人質の安否が確認されていない。 アルジェリア治安当局筋がロイターに語ったところによると、これとは別に人質 30 人が死亡。 日本人 2 人を含む少なくとも 7 人が外国人で、英国人 2 人、フランス人 1 人も含まれている。 アルジェリア人の人質は 8 人が死亡した。 武装勢力側の死者は少なくとも 11 人だという。 人質の死者のうち、残りの国籍は不明。 数十人が脱出したとみられる。 アルジェリア人労働者約 600 人は無事だった。 日揮によると、現地の日本人駐在員 14 人と連絡が取れていない。 ノルウェーの国営エネルギー企業スタトイルによると、8 人の従業員の安否が不明。 人質となっていたアイルランド人エンジニアは、人質を乗せたジープ 4 台がアルジェリア軍によって爆破されたのを見たと証言した。 軍の司令官らは、武装勢力が人質とともに国外に脱出することを要求したため、襲撃から約 30 時間後に救出作戦に踏み切ったとしている。 英国の外交筋は、人質が拘束されている状況が終わったことを示す情報をまだ受け取っていないと述べた。 同筋は「現場の状況は依然としてまったく流動的だ。 アルジェリア当局からは事態が収束したとの情報は何もない。」と述べた。 政府関係者によると、今回の事件では、米国人、ノルウェー人、ルーマニア人、オーストリア人も人質になっていた。 先の治安当局筋によると、武装勢力側の死亡者 11 人のうち、アルジェリア人は 2 人のみ。 残りはエジプト人 3 人、チュニジア人 2 人、リビア人 2 人、マリ人 1 人、フランス人 1 人だった。 Reuters = 1-18-13) アルジェリア拘束 : 束:官房長官「救出に必要な働きかけ」 岸田文雄外相は 16 日深夜、アルジェリアのメデルチ外相と電話で協議し、日本人拘束事件について「事態を極めて憂慮している。 こうした行為は断じて許すことはできない。」として人命最優先の対応を要請した。 メデルチ外相は「人質の無事救出に向けて最大限の配慮をする」と応じた。 岸田外相はその後、クロアチアを訪問中の城内実外務政務官を早期に現地へ派遣することを記者団に明かした。 安倍晋三首相は 16 日、ベトナム・ハノイに到着直後にアルジェリアでの日本人拘束事件に関する第一報を受け、(1) 被害者の人命を第一に対処する、(2) 情報収集を強化し、事態の掌握に全力を尽くす、(3) 当事国を含む関係各国と緊密に連携する - - よう菅義偉官房長官に指示した。 これを受けて、政府は首相官邸に内閣危機管理監を長とする官邸対策室、外務省に領事局長を長とする対策室を設置した。 菅氏は 16 日夜、緊急に記者会見し、被害者を日揮の従業員と確認したものの、人数については「いろいろな情報があるので断定はできない」と述べるにとどめた。 そのうえで「邦人の救出、安全確保のためにアルジェリア政府をはじめとして必要な働きかけを行っている。 人命第一で対処するよう外交ルートを通して対策を行っている。」と語った。 警察庁も 16 日夕、国際テロリズム対策課長を長とする対策室を設置した。 警察庁対策室によると、犯行グループは特定できていないが、現地はイスラム過激派の勢力が強いため「関与を否定できない」としている。 (鈴木美穂、村上尊一、mainichi = 1-17-13) |