カブールの軍病院爆発、IS が犯行声明 タリバン幹部が死亡か

アフガニスタンの首都カブールにある軍病院で 2 日に起きた爆発で、ロイター通信は 3 日、過激派組織「イスラム国 (IS)」が系列のアマク通信を通じて犯行声明を出したと伝えた。 同国ではイスラム主義勢力タリバンの支配に反対する IS の支部組織が、タリバンの治安部門や市民の集まる宗教施設などを狙った攻撃を仕掛けている。

ロイター通信などによると、爆発後には駆けつけたタリバン治安部門と襲撃犯の間で銃撃戦が起き、死者は少なくとも 25 人に上ったという。 地元メディアは、死者の中にタリバン治安部門のハムドゥラ幹部が含まれていると報じた。 ハムドゥラ幹部は 8 月にタリバンがカブールを制圧した際、大統領府に最初に乗り込んだ人物として知られる。 (バンコク = 乗京真知、asahi = 11-3-21)


アフガニスタン、人口の半分以上が飢餓状態に WFP が報告書で予測

国連世界食糧計画 (WFP) は 25 日、アフガニスタンで 11 月以降、人口の半分以上にあたる 2,280 万人が飢餓状態になると予測した報告書を発表した。 「世界最悪の人道危機の一つに陥っている」としている。 報告書によると、すでに 9 - 10 月、前年同期に比べて 30% 増となる 1,900 万人が飢餓状態に陥った。 干ばつや新型コロナウイルス感染に加え、8 月にイスラム主義勢力タリバンが政権を掌握したことで、国際的な支援が滞ったという。

11 月 - 来年 3 月はさらに食料不足が深刻化し、飢餓に苦しむ人口が前年同期から 35% 増え、国連が調査を始めて以来最悪の水準になる恐れがあると警告した。 特に 5 歳未満の子どもは年末までに、320 万人が栄養失調に陥る可能性があるとみている。 今回はまた、失業者の増加や現金不足が原因で、都市部の住人も地方と同じ割合で食料不足にあることが分かった。 中流階級だった層も飢餓状態になる可能性があるという。 WFP は「支援がなければこの冬、何百万人もの人が移住するか餓死するかの選択を迫られることになる」として国際社会に支援を呼びかけている。 (森岡みづほ、asahi = 10-25-21)


アフガン南部のモスク爆発、死者 47 人に IS が犯行声明

アフガニスタン南部カンダハルにあるイスラム教シーア派のモスク(礼拝所)で 15 日に起きた爆発で、AP 通信は死者が少なくとも 47 人に達したと伝えた。 自爆テロとみられ、過激派組織「イスラム国 (IS)」の支部組織が事件後、系列のアマク通信を通じて犯行声明を出した。

地元メディアによると、金曜礼拝で混み合っていたモスクに武装した数人が侵入し、少なくとも 3 回の爆発が起きたという。 北部クンドゥズ州のシーア派モスクでも 8 日、IS 支部による自爆テロが起き、少なくとも 55 人が死亡していた。 スンニ派系の IS 支部は、同国で少数派にあたるシーア派や、カンダハルを本拠に権力を掌握したイスラム主義勢力タリバンを敵視している。 IS 支部としては、シーア派を攻撃して政情不安を際立たせ、タリバンの統治に打撃を与える狙いとみられる。 (バンコク = 乗京真知、asahi = 10-16-21)


アフガン北部のモスクで爆発 少なくとも 50 人死亡、けが人多数

アフガニスタン北部クンドゥズ州にあるイスラム教シーア派のモスク(礼拝所)で 8 日午後、爆発があった。 AFP 通信が病院関係者の話として伝えたところでは、少なくとも 50 人が死亡し、多くのけが人が出ているという。 同日夕時点で犯行声明は出ていない。 報道によると、モスクには金曜礼拝のために多くの市民が集まっていた。

同国ではイスラム主義勢力タリバンが 8 月 15 日にガニ政権を崩壊させて権力を握った後も、タリバンと敵対関係にある過激派組織「イスラム国 (IS)」の支部組織による攻撃が続いている。 IS 支部は、首都カブールの空港付近で 180 人以上が死亡した同月 26 日の自爆テロでも犯行声明を出していた。 今回のモスクの爆発の犠牲者は、それに次ぐ規模。 タリバン治安部門が監視を強めているが、攻撃を防ぎ切れていない。 (バンコク = 乗京真知、asahi = 10-8-21)


アフガン女性ら、タリバンに抗議デモ 「私たちは 90 年代とは違う」

イスラム主義勢力タリバンが権力を掌握したアフガニスタンの首都カブール中心部で 3 日、タリバンによる女性の抑圧を防ごうと、女性ら十数人が抗議デモを行った。 女性によるデモは 4 日もあった。 タリバンは 1996 - 2001 年の旧政権時代に、女性の教育や社会進出を妨げ、国際的な批判を浴びた過去があり、懸念が高まっている。 地元メディアによると、女性たちは街頭で「平等 正義 民主主義!」、「私たちは 90 年代とは違う」などと書いた紙を掲げながら、デモの排除を試みるタリバン戦闘員たちに抗議した。 SNS 上にはタリバン戦闘員に殴られて頭から血を流したとされる女性の動画が拡散した。

タリバンは最近、「女性の権利を尊重する(タリバン報道担当のムジャヒド幹部)」と表明し、女児の通学を認めるなど一定の変化を見せている。 ただ、女性の就労に「イスラム法の範囲内(同幹部)」との条件を付けたり、国営テレビの女性キャスターを降板させたりする動きもあり、人権活動家は先行きを心配している。 3 日には西部ヘラートでも女性たちのデモがあった。 抗議のうねりが各地に波及する可能性もある。 (バンコク = 乗京真知、asahi = 9-4-21)


アフガン戦争終結を正式宣言 駐留軍撤収「類いまれな成功」 - 米大統領

【ワシントン】 バイデン米大統領は 31 日、ホワイトハウスで国民向けに演説し、2001 年から続いたアフガニスタン戦争の終結を正式に宣言した。 民間人の退避と駐留部隊撤収について「類いまれな成功だった」と自賛。  アフガンへの軍事関与を続けるのではなく、中国など今後の脅威への対処に国力を傾けるべきだと訴え、アフガン戦争に幕を引いた決断を正当化した。

バイデン氏は約 25 分間の演説の冒頭、「米史上最も長い、20 年に及ぶアフガン戦争を終わらせた」と表明。 これまでに莫大な資金を投じ、計 80 万人の兵士を送り込んだが、その対価として多くの機会を失ったとして、「もはや国益にかなわない戦争を続けることはしない」と理解を求めた。 一方、イスラム主義組織タリバンが全権を掌握したアフガンから現地協力者ら 12 万人以上を退避させ、出国を希望する在留米国人の 9 割を救出したと強調した。 「米国だけがこの退避作戦を遂行する能力を有していた」と胸を張った。 (jiji = 9-1-21)


タリバンと米軍が「反テロ」で協力か - カブール空港テロと習近平のジレンマ

中国はタリバンを支援する交換条件としてテロの撲滅を絶対条件とした。 今般のテロでタリバン兵士 28 人が犠牲になっており、タリバンはアメリカと協力してテロ組織をつぶそうとしている。 これは習近平に痛手か?

カブール空港テロでタリバン戦闘員 28 人が犠牲

8 月 26 日、アフガニスタンのカブール空港でイスラム過激集団「ISIS (イスラム国)」による自爆テロが起き、85 人が死亡したとロイター電が伝えた。 それによれば、

  • 襲撃により、少なくとも 72 名のアフガニスタン人が死亡
  • 米軍は兵士 13 名が死亡、18 名が負傷
  • タリバンは少なくとも28人の戦闘員が死亡
  • ISIS の脅威にもかかわらず、避難は加速している

とのことだ。

注目されるのは犠牲者の中にタリバン戦闘員が 28 人もいるということである。 このたびの自爆テロに関して犯行声明を出したのは、ISIS の関連組織の一つである「ISIS-K」で、「アメリカ軍の翻訳者や協力者」を狙ったと発表した。 ロイター電によれば、ISIS-K は当初、パキスタンとの国境沿いの地域に限定されていたが、同国北部に第 2 の戦線を確立したとのこと。 ニューヨーク州のウェストポイントにあるテロ対策センターによると、ISIS-K にはアフガニスタン人に加え、他の過激派グループのパキスタン人やウズベクスタン人の過激派が含まれているという。 タリバンとは敵対する勢力だ。 タリバンがアメリカと和平合意に至ったことに反対している。

タリバンが米軍と協力して過激派 ISIS を打倒する

アメリカ中央軍の司令官を務めるフランク・マッケンジー将軍は、空港を標的としたロケット弾や車両爆弾の可能性を含め、ISIS によるさらなる攻撃を警戒している」と述べ、「一部の情報はタリバンと共有している」とした上で、「タリバンによっていくつかのテロ攻撃が阻止された」と付け加えた。 つまり、タリバンはテロ集団と戦っているということだ。 何よりも驚くべきは、マッケンジー将軍が「米軍の司令官はタリバンの司令官と協力してさらなる攻撃を防いでいる」と語ったことである。 つまり、「米軍がタリバンと協力してテロ活動を防いでいる」というのだ。

中国共産党が管轄する中国の中央テレビ局 CCTV も 8 月 27 日正午のニュースでカブール空港テロ事件に関する特別番組を組んだのだが、そこで中国国際問題研究院の研究員である崔洪建氏が「米軍とタリバンが協力して共にテロと戦う」という可能性を排除できないと解説していた。 そうなると、アメリカがここに来て、初めて「反テロ」に向けてタリバンと共闘するという、前代未聞の事態が現れるということになる。

習近平のメンツはつぶれてしまう?

万一にもタリバンとアメリカが組んだとすれば、これはとんでもない事態がやってくる。 つまり、8 月 15 日のコラム<タリバンが米中の力関係を逆転させる>で書いたように、もしアメリカができなかった「アフガニスタンからテロを無くした上でアフガニスタンを経済成長させる」という秩序形成を、今後中国が成し遂げることができたとすれば、世界は中国の方が国際社会の統治能力があるとして、アメリカより中国を高く評価する可能性が出てくるという「恐るべき現実」が横たわっていると指摘した。

しかし、テロが起きたことによって、なんと、「タリバンとアメリカが協力してテロ組織を打倒する」という構図になったら、これは「前代未聞の構図」で、結局、アメリカが強かったということにつながっていく。 これでは習近平のメンツがつぶれてしまうのではないのか?

それでも絶対に軍事介入できない中国

こんな格好のつかないことになっても、中国にはアフガニスタンに軍事介入できない事情がある。 イスラム教徒が多い新疆ウイグル自治区を抱えているからだ。 習近平はウイグル族が「東トルキスタン・イスラム運動」という過激派テロ集団に流れるのを防ぐために、ウイグル族を 100 万人ほど「教育のため」と銘打っている収容施設に入れて思想教育を強化している。 つまり思想的弾圧を断行しているのだ。 それだけでも本来ならイスラム過激派の攻撃対象となってもおかしくはない。 だから 2014 年までは中国国内でも頻繁にテロ事件が起きた。 今は徹底した監視と弾圧を実行しているので 2016 年以降は起きていない。

もし中国が「反テロ戦争」のために他国であるアフガニスタンに軍事介などしたら、今度は中国が ISIS のターゲットとなって攻撃されるのは確実だろう。 習近平の最大の国家目標は、中国共産党による一党支配の安全な維持だ。 ISIS のターゲットとなったりしたら、第 2 の「9・11」事件が今度は中国で起こり、一党支配体制が崩壊する危険性がある。 だから習近平としては、絶対に軍事介入はしない。 習近平がやろうとしているのは、タリバンがテロ活動を絶対にアフガン地区で起こさせないという保障を見定めたら、国家として承認して「一帯一路」に加盟させ、経済交流をしていくということなのである。

テロ事件は結果的にタリバンに利する?

上記の CCTV 特集番組で、崔氏は以下のような解説を行っている。

  1. タリバンは、テロ対策の問題でアメリカに友好的な姿勢を示しているが、これによって「タリバンがテロとの関係を断ち切った」ことを示すことにもつながる。 したがってタリバンはしばらく、この有利な形を利用するだろう。
  2. 一方では、何らかの形で米国との協調を続けるだろう。 同時に、今後、こうした反テロやその他の手段を用いて、タリバンは、西側諸国を始めとした多くの国々がアフガニスタンの復興や社会秩序の維持を含めた経済のために、必要な援助を(アフガニスタン政府に提供したのと同様に)継続してタリバン政府に対しても提供してくれるよう求めるだろう。
  3. したがって、現状はタリバンにとって相対的に有利なのではないだろうか。

習近平のジレンマと計算

中国共産党管轄下の CCTV でこのように言ってしまっていいのだろうかと思うほど、これは実に「きわどい」話だ。 アメリカと協力しながら、中国が要求する「テロ活動がない状況」を現出した場合、中国のメンツはアメリカに対して損なわれる。 しかし、米軍はアフガニスタンの地から「撤収する」わけだから、もし「テロ組織」を撲滅できたならば、再びアフガニスタンに居座る可能性はゼロだと習近平は踏んでいるだろう。

一方、バイデン大統領は必ず米軍を 8 月 31 日までに撤収させると言っているのだから、米軍がタリバンと協力してテロ組織撲滅に従事することなどできないと思うのが常識的な反応だろう。 しかし、おそらくタリバンもピンポイント的に「テロ組織撲滅」という目的にのみ特化した部隊を残すことには賛同するだろうし、遠隔操作という方法もある。 何らかの方法を考えるのではないかと推測される。

そんな「夢のようなこと」があるはずがないだろうと思われる方は、"混乱するカブールでの避難生活が続く中、CIA 長官がタリバンの政治的リーダーと秘密の会合を持った" をご覧になると、少し信憑性が湧くかもしれない。 万一にも、本当にテロ組織撲滅をアメリカとの協力においてタリバンが成し遂げることができた暁には、中国は 8 月 19 日にタリバンが建国宣言をした「アフガニスタン・イスラム首長国」を「国家」として承認し、経済支援に着手する計算ではないだろうか。

事実、今年4月25日に新華社は、アフガニスタンが最も必要としている食糧支援を行う協定書(緊急食糧援助プロジェクトの引き渡し)に署名した発表しているのだから、まず食糧支援から始めて、投資を開始していくものと考えられる。 「格好の悪さ」を甘んじて受けても、経済連携という「実」を取る。 そして敗残兵のような混乱をもたらした米軍は、撤退後にタリバンと協力してテロ組織撲滅に貢献し、「名誉ある撤退」を飾って去っていくのだろうか。 歴史の皮肉を実感しながら、しばらく成行きを観察し続けたい。 (遠藤誉、NewsWeek = 8-28-21)


空港テロ「予断許さない状況」 政府、邦人ら退避は継続

アフガニスタンの首都カブールの国際空港付近で起きたテロ攻撃について、加藤勝信官房長官は 27 日午前の閣議後会見で「情勢は流動的で予断を許さない状況にある」と懸念を示しつつ、自衛隊機による日本人や現地スタッフらの退避を続ける方針を強調した。

加藤氏は会見で、現地に残る日本人や在アフガニスタン大使館のスタッフ、派遣された自衛隊員について「けがなど生命身体に影響があったとの情報には接していない」と説明した。 そのうえで「空港内等において、米国がしっかりと管理している。 この状況には変わりはない。」とも述べ、輸送機派遣の根拠である自衛隊法 84 条の 4 に定められた「輸送を安全に実施することができると認めるとき」との要件は維持されているとの認識を示した。

テロから一夜明けた 27 日午前には首相官邸に外務・防衛両省の幹部らが集まり、協議した。 両省幹部は「引き続き作戦は継続している」としているが、米軍の撤退を前に、残り時間は少ない。 岸信夫防衛相は 27 日の閣議後会見で活動期限について、「実質的には今日くらい(まで)の活動を考えている」と述べた。 政府は同日中に国家安全保障会議 (NSC) を開き、今後の方針を協議することも検討している。

政府は航空自衛隊の輸送機計 3 機を派遣し、国際機関で働く日本人や、大使館と国際協力機構 (JICA) の現地スタッフらを国外に退避させる予定。 人数はその家族も含めて数百人規模を想定している。 しかし、最初の 2 回は不調に終わった。 政府関係者によると、退避対象者が空港にたどり着いていないのが理由という。 米軍の撤退期限が 31 日に迫るなか、政府は自衛隊が現地で活動できるのは 27 日までとみている。 今回の自爆テロによって空港への移動がさらに困難になるとみられ、退避に与える影響は必至だ。 (asahi = 8-27-21)


カブール空港付近で爆発、IS の自爆テロか 米兵ら死傷

アフガニスタンの首都カブールの国際空港近くで 26 日に爆発があった。 米中央軍によると、米軍兵士 13 人が死亡し、18 人が負傷した。 米軍などはイスラム主義勢力タリバンと敵対する過激派組織「イスラム国 (IS)」戦闘員による自爆テロとみている。 アフガニスタンの保健省の当局者は米 CNN の取材に対し、少なくとも市民ら 60 人が死亡し、140 人が負傷したと語った。

26 日にオンラインの記者会見をした米中央軍のケネス・マッケンジー司令官によると、自爆テロが起きて米軍兵士が死傷したのは、空港出入り口の「アビーゲート」と呼ばれる通用門。 米軍兵士が国外脱出を希望して空港にやってきたアフガニスタン人らに対し、武器や爆弾などを所持していないかチェックを行っていた。 自爆テロ後、複数の IS 戦闘員が市民や米軍兵士に向けて発砲したという。 アビーゲートのほかに、空港近くのバロンホテル付近でも自爆テロがあり、アフガン人の死傷者が出ているという。

「我々は行動を起こす用意がある」 報復攻撃を検討か

マッケンジー氏は会見で、「IS の脅威は極めて本物だ。 今後もこれらの攻撃を続けることが彼らの願望だと思う。」と述べ、IS によるテロ攻撃がこれからも現地で続く可能性が高いという見方を示した。 マッケンジー氏はまた、「我々はアフガニスタンでの IS に対する作戦を展開する権利をもっている。 我々はいつでも行動を起こす用意がある。」と述べ、IS への報復攻撃を検討していることを明らかにした。

一方、マッケンジー氏は会見で、カブール空港で行われている退避作戦をめぐり、アフガン政権崩壊直前の 14 日以降、10 万 4 千人を国外へと退避させたという。 このうち、6 万 6 千人を米国、3 万 7 千人を同盟国・友好国が搬送。 米国市民についてはこれまでに 5 千人が退避し、1 千人がアフガニスタンに取り残されているという。 米中央軍 (CENTCOM) のケネス・マッケンジー司令官は 26 日の記者会見で、アフガニスタンの首都カブールの国際空港近くであった自爆テロにより、米軍兵士 12 人が死亡し、15 人が負傷したことを明らかにした。 多数のアフガン人の死傷者がでているという。 (ワシントン = 園田耕司、asahi = 8-27-21)


アフガン撤退、米政権の誤算 「敗北」責任論巻き起こる

アフガニスタンの首都カブールが 15 日、反政府勢力タリバーンの手に落ちた。 米国は大使館から職員を避難させ、急いで国外脱出を図っている。 8 月末に向けて「秩序ある米軍撤退」を計画していたバイデン政権は、なぜ状況を読み違えたのか。 「米国の最も長い戦争を終わらせる時だ。」 バイデン大統領が米軍のアフガン撤退を宣言したのは、4 月 14 日だった。 2001 年 9 月の米同時多発テロを受けて始めた「対テロ戦争」は、すでに 20 年目に入っていた。 厭戦(えんせん)ムードが長引くなか、中国の脅威など新たな課題に力を注ぐため、不毛な戦争を終わらせる - -。 アフガン撤退は、バイデン政権にとっての「成果」となるはずだった。

5 月に撤退を本格化すると、タリバーンの支配地域拡大が始まった。 だがバイデン氏は 7 月、「タリバーンが国全体を支配する可能性は極めて低い」と言い切った。 根拠として政権が主張し続けたのが、アフガン政府軍の存在だ。 米国は 1 兆ドル以上を投資して政府軍を訓練し、最新の兵器を与えてきた。 軍勢も 30 万人を誇り、タリバーンの 7 万 5 千人を優に上回るためだ。

だが現場で起きていることは違った。 政府軍や警察は士気も低く、タリバーンに対して敗走を続けた。 元国家情報長官のジェームズ・クラッパー氏は CNN の取材に「兵士のやる気はカネでは買えないということだ」と評した。 8 月に入り、タリバーンは一気に周辺都市の制圧を始めた。 それでも政権幹部は「政府軍には自らの国を守る能力がある」と言い続けた。 米軍の撤退作業がすでに 95% 以上終わり、アフガン国内での情報収集能力が落ちていたとの指摘もある。

責任は誰に? テロ防止と武力介入のジレンマ

事態を深刻にみて、米軍が現地に 3 千人の部隊派遣を決めたのは今月 12 日のことだった。 3 日後、カブールは陥落した。 ブリンケン国務長官はこの日、「残念ながら、彼ら(政府軍)は国を守ることはできなかった」と認めた。 9・11 を機に始まったアフガニスタンでの戦いは、米国の「敗北」を印象づける結末を迎えた。 その責任はどこにあるのかという議論が早くも巻き起こっている。

米軍のアフガン撤退は、国内で超党派の強い支持を得た方針だった。 20 年に及ぶ対テロ戦争で、米国が費やした予算は 6.4 兆ドル(約 700 兆円)。 負担の連鎖を止めるのは、米国の総意とも言えた。 それでも、オバマ政権以降の歴代政権が撤退を実現できなかったのは「テロ再発の恐れ」というジレンマに縛られていたからだ。 アフガニスタンとともに対テロ戦の舞台となったイラクでは、オバマ政権が 11 年に撤退を果たしたものの、過激派組織「イスラム国 )IS)」の台頭を許し、米軍の再派遣を余儀なくされた苦い記憶もある。

今回、そんなジレンマを振り切って撤退を最終決断したのがバイデン氏だった。 だが今回のカブール陥落を受け、米国では再び「テロの懸念論」が再燃している。 テロ防止か武力介入か、という答えのないジレンマから米国は抜け出せていない。 そもそも、2001年に米国が始めた「対テロ戦争」は何をもたらしたのか。 「多くの米国人が 20 年間にわたりアフガン人の未来のために犠牲になった後、アフガン政府が崩壊するのを見るのは心が痛む。」 米下院のシフ情報委員長は 15 日、そんな声明を出した。

20 年かけて支援してきたアフガン政府はあっけなく崩壊し、国内はタリバーン支配に逆戻りしようとしている。 米国が進めた女性たちの権利の尊重も、今後は継続される保証はない。 報道によれば、米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は、アルカイダのようなテロ組織がアフガニスタンで再興する可能性は高まったとの見解を示しているという。 ニューヨーク・タイムズ紙はこう論評している。 「公平にせよ不公平にせよ、米国がアフガニスタンで行った実験において、長く続いた屈辱の最後を指揮した大統領として、バイデン氏は歴史に名を残すことになるだろう。」 (ワシントン = 高野遼、asahi = 8-16-21)


タリバーンへの「権力移行」 アフガン政府が認める声明

アフガニスタンのアブドゥル・サタール・ミルザクワル内務相代行は 15 日午後、ビデオ声明で国民に対し、「権力の移行は平和裏に進む」との見方を明らかにした。 政府側が「権力の移行」を認めたのは、これが初めて。 今後、タリバーン主導の国家運営が始まる見通しが強まった。 タリバーンは同日朝までに首都以外の全ての主要都市を制圧し、首都でタリバーンと政府軍の交戦が始まる懸念が高まっていた。 ミルザクワル内務相代行は、ビデオ声明で「首都カブールは攻撃されない。 治安当局がカブールの安全を確保する。」と語った。

同日昼には、タリバーンの報道担当者が「(タリバーン執行部は)構成員たちにカブール市内には入らず、(カブール郊外の)ゲートで待機するよう指示した。 市民の命や財産、名誉を害することなく、平和裏に権力の移行が行われるよう(政府側と)交渉している」とツイートしていた。 駐留米軍が 8 月末までの撤退を進めるなか、タリバーンは地方都市への一斉攻撃を開始。 6 - 15 日に全国 34 州都のうち 30 州都の制圧を宣言し、首都につながる幹線道路などを次々に占拠した。 (バンコク = 乗京真知、asahi = 8-15-21)