アベノミクスよ、どこへ 理論的支柱の「教祖」が変節

人為的にインフレを起こすリフレーション (reflation) はアベノミクスの主軸政策だ。 その提唱者である浜田宏一米エール大名誉教授の変節が最近、リフレ論者たちを失望させ、政府幹部や経済学者たちをあきれさせている。 リフレ派は、日本銀行が空前の規模のお金を市場に投入する政策で必ずデフレから脱却して景気が良くなる、と主張してきた。 浜田氏はその指導者であり、安倍晋三首相がアベノミクスの理論的支柱として内閣官房参与に迎え入れた経済ブレーンだ。

その当人が突然「QE (量的金融緩和)が効かなくなっている(「激論マイナス金利政策」日本経済研究センター編)」と言い始め、「学者として以前言っていたことと考えが変わったことは認めなければならない(日本経済新聞 11 月 15 日付インタビュー)」と白旗を掲げたのだから、関係者は驚いたに違いない。 教祖が突然「信仰をやめる」と言い出したに等しい。

現実を見ればリフレ論を掲げ続けるのには無理がある。 日銀がいくら市場に資金を投入してもインフレの兆候は見えないからだ。 足元の消費者物価は 8 カ月連続でややマイナス。 リフレ派がいくら強弁しようと、政策の誤りは隠しようがない。 日本銀行でリフレを推進してきた岩田規久男副総裁らも事実上の転向を余儀なくされた。 9 月の政策決定会合で、お金の量の拡大に必ずしもこだわらない新政策への変更に反対票を投じなかったのだ。

当人たちは現状をどう総括しているのだろうか。 浜田氏に取材を申し入れたが、残念ながら回答は得られなかった。 「リフレ派は終わった」と断じるのは中原伸之氏だ。 浜田氏とともにリフレ論を唱え、首相の経済ブレーンを務めてきた元日銀審議委員だ。 「私はリフレ派というよりリアリスト。 インフレ目標にこだわって手を広げるより、名目国内総生産を目標にじっくりやればいい。」と語り、日銀に路線修正を求める。

問題は「リフレ派なき日銀」に変わったとしても、金融政策がきれいさっぱり正常化するわけではないことだ。 市場にたまったお金の量は平時の 3 倍の 415 兆円にもふくらんでしまった。 今後の金融のリスクを考えれば、これは放置できない。 しかもこれが年間 80 兆円ペースで増え続ける仕組みを、日銀はいまも明確には修正できていないのだ。

経済危機をしのぐため先進各国は異常な金融緩和にのめり込んだ。 その危機が終わり米国はすでに利上げに転じ、正常化に動き出した。 欧州も量的緩和の縮小を決めた。 ひとり日銀だけが出口論の議論さえ「時期尚早(黒田東彦総裁)」と封印し続ける。 アベノミクスの呪縛にとらわれた日銀が生みだす金融政策の異常。 それが、こんどはアベノミクスそのものを漂流させようとしている。 (編集委員・原真人、asahi = 12-13-16)


GDP 下方修正、年率 1.3% 増 7 - 9 月期

内閣府が 8 日発表した 7 - 9 月期の国内総生産 (GDP) の 2 次速報は、物価変動の影響を除いた実質成長率が前期(4 - 6 月期)比 0.3% 増だった。 年率換算では 1.3% 増。 11 月に発表された 1 次速報の同 0.5% 増(年率換算 2.2% 増)から下方修正された。 プラス成長は 3 四半期連続。 国際連合の基準改定に伴い、内閣府は今回の発表分から GDP の算出方法を変更。 新基準では企業の研究開発費などが算入されるようになり、1 次速報と計算方法が異なる。 (asahi = 12-8-16)

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日本の実質成長率、17 年は 1.0% OECD 見通し

経済協力開発機構 (OECD) は 28 日、世界経済見通しを発表した。 2016 年の日本の実質国内総生産 (GDP) の成長率は 0.8%、17 年は 1.0% とした。 6 月時点の見通し(16 年は 0.7%、17 年は 0.4%)から、それぞれ上方修正した。 6 月時点では 17 年 4 月の 10% への消費増税を前提にしていた。 今回は 19 年 10 月までの再延期を踏まえ、今年度の 2 次補正予算が組まれたことも反映し、成長を押し上げて円高によるマイナス効果を抑えられるとみた。 18 年は 0.8% で、やや減速すると見通す。 (ロンドン = 寺西和男、asahi = 11-28-16)

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GDP 3 期連続プラス 7 - 9 月期、年率換算 2.2% 増

内閣府が 14 日発表した 2016 年 7 - 9 月期の国内総生産 (GDP) の 1 次速報は、物価変動の影響を除いた実質成長率が前期(4 - 6 月期)より 0.5% 増え、3 四半期連続のプラスとなった。 この状態が 1 年続いた場合の年率に換算すると 2.2% 増となる。

個人消費や設備投資はほぼ横ばいだったが、輸出が前期より 2.0% 増加した。 アジア地域でのスマートフォンの生産が堅調で、関連部品などが増えた。 GDP では、輸出に含まれる訪日外国人客の消費の拡大も数値を押し上げた。 GDP の 6 割を占める個人消費は前期比で 0.1% 増えた。 増加は 3 期連続。 台風が相次いだ影響でアルコールを含む飲料が不振だったが、新型スマートフォンなど携帯電話関係が好調だった。 内閣府は「事実上横ばいで、力強さはない」としている。 (中村靖三郎、asahi = 11-14-16)


中国からの輸入品、値上がり? 「特恵関税」外す方針

財務省は、中国、ブラジル、メキシコ、タイ、マレーシアの 5 カ国について、途上国支援のために輸入関税を低くする「特恵関税制度」の対象国から外す方針を固めた。 中国など 5 カ国は急速な経済成長で輸出競争力を上げている。 欧州連合 (EU) やカナダはすでに同様の制度の対象から外しており、2019 年度までに日本でも除外することにした。

このなかで中国は、日本の輸入額の 4 分の 1 を占める。 15 年度に優遇税率を適用されたものの 6 割が中国からの輸入品だった。 マツタケやウナギのかば焼きなどは、輸入増を理由にすでに関税が上がっている。 今回上がるのは、冷凍タコやペットボトルの原料ポリエチレンテレフタレートなど 3 千品目程度とみられる。 同制度は、途上国の輸出振興や経済支援を目的に、多くの先進国が導入。 日本も、143 カ国・地域からの輸入品を対象に、低い関税をかけたり、免除したりしている。 日本の輸入額の約 2% (1 兆 6 千億円分)が対象になっている。 (奈良部健、asahi = 11-18-16)


企業物価指数、10 月は前年比 -2.7% 5 カ月連続で下げ幅縮小

[東京] 日銀が 11 日公表した 10 月の企業物価指数 (CGPI) は 98.7 となり、前年比で 2.7% 下落した。 国内企業物価は 19 カ月連続で前年比で下落しているが、原油価格の持ち直しなどを受けて下落幅は 5 カ月連続で縮小している。 ロイターがまとめた民間調査機関の予測中央値は前年比 2.7% 下落だった。 前年比で見てウエートが最も大きい電力・都市ガス・水道は 10.8% 下落と前月の同 10.3% 下落からマイナス幅が小幅拡大したものの、次いで影響が大きい化学製品(同 6.1% 下落)、石油・石炭製品(同 7.3% 下落)などは下落幅が縮小している。

原油を中心とした国際商品市況の持ち直しが続き、全体として国内企業物価の下落圧力は弱まりつつある。 もっとも、全 814 品目のうち前年比で上昇したのは 210 品目だったのに対し、下落は 519 品目となった。 下落品目が上昇品目を 309 上回っており、前月の 302 品目から差が拡大、個別に見ると下落品目も増えている。 日銀では、企業物価の先行きについて「国際商品市況や為替の動向、海外の政治情勢の影響などを注意深く確認していきたい」としている。

前月比では 0.1% 下落。 2 カ月ぶりのマイナスになったが、これは夏季の電力料金割増期間終了による影響が大きく、その要因を調整すれば同 0.1% 上昇となる。 企業物価指数は、企業間で取引される財の価格を合成した指数。 企業間の需給や為替、国際商品市況などで変動する。 (Reuters = 11-11-16)

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8 月の企業物価指数、前年比 3.6% 下落 前月比は 2 カ月ぶり下落

日銀が 12 日に発表した 8 月の国内企業物価指数(2010 年平均 = 100)は 98.9 で、前年同月比で 3.6% 下落した。前年比で下落するのは 17 カ月連続。 7 月確報値の 3.9% 下落からはやや下げ幅を縮めた。 市場予想の中央値は 3.4% 下落だった。

前月比では 0.3% 下がり 2 カ月ぶりのマイナスだった。 7 月確報値は前月比で横ばいだった。 液化天然ガス (LNG) 通関単価の下落の影響があった電力・都市ガス・水道料金が全体を押し下げた。 国際市況の低迷や円高を背景に石油・石炭製品や非鉄金属も下落。 豚肉や牛肉、鶏卵など農林水産物の価格の下げも目立った。 日銀は「国際商品市況や円相場の影響が引き続き大きく、国内需給要因による変動は小さい(調査統計局)」としている。

円ベースの輸出物価は前月比で 1.4% 下落、前年同月比で 14.6% 下落した。 前年比の下落幅は 2009 年 7 月(15.6% 下落)以来の大きさだった。 輸入物価は前月比で 2.4% 下落し、前年比では 22.0% 下げた。 円高進行が円ベースでの価格を押し下げた。 企業物価指数は企業同士で売買するモノの価格動向を示す。 公表している 814 品目のうち、前年同月比で下落したのは 510 品目となった。 上昇は 232 品目だった。 下落品目と上昇品目の差は 278 品目で、7 月の確報(287 品目)から縮小した。 (nikkei = 9-12-16)

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7 月の企業物価指数、3.9% 下落 日本銀行

日本銀行が 10 日発表した 7 月の企業物価指数(2010 年平均 = 100、速報)は、前年同月より 3.9% %下がり、99.2 だった。 下落は 16 カ月連続。 企業物価指数は、企業間で売買されるモノの価格水準を示す。 原油安の影響でガソリンなどの石油・石炭製品が前年同月より 19.5% 下落したほか、電力や都市ガスの料金も同 12.0% 下がった。 価格が下落した品目は全 814 品目のうち 508 品目で、上昇した品目数を大きく上回った。 (asahi = 8-10-16)

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6 月の企業物価指数、4.2% 下落

日本銀行が 12 日に発表した 6 月の企業物価指数(2010 年平均 = 100、速報値)は、前年同月より 4.2% 下落して 99.2 となった。 下落は 15 カ月連続。 昨年より原油価格が安いことで、石油・石炭製品が下落した。 為替の円高や中国の増産の影響で、化学製品や非鉄金属などの価格が下がったことも、全体を押し下げた。 (asahi = 7-12-16)


機械受注 8 月は反動減で前月比 -2.2%、計画比強めで推移

[東京] 内閣府が 12 日に発表した 8 月機械受注統計によると、設備投資の先行指標である船舶・電力を除いた民需の受注額(季節調整値)は、前月比 2.2% 減の 8,725 億円となった。 3 カ月ぶりに減少したが、反動減によるものとみられ、7、8 月をならすと計画比強めの推移となっている。 7 - 9 月期は 2 四半期ぶりの増加となる可能性が強まり、設備投資は持ち直しに転じる見通しが高まった。

8 月の結果は、ロイターの事前予測 5.5% 減ほどマイナス幅は大きくならず、「6、7 月の連続増加の反動減としては小幅にとどまった。(内閣府幹部)」 前年比では 11.6% 増と 2 桁増だった。 製造業は前月比 4.0% 減とやや大きめの減少だが、6 月に 17.7% 増、7 月も微増となった反動の範囲内だ。 非製造業は同 1.9% 減。 こちらも 2 カ月連続増加の反動減。 企業の受注計画をもとに内閣府が試算した 7 - 9 月の見通しは前期比 5.2% 増だが、9 月がたとえ横ばいでも 7 - 9 月は同 8.5% 増となり、見通しを上回りそうだ。

内閣府は、機械受注の判断を「持ち直しの動きがみられる」で据え置いた。 民間調査機関では、基本的には円高や世界経済の停滞の影響により 4 - 6 月期に弱含んでいた設備投資が持ち直しに向かう流れが続いているとみている。 農中総合研究所の主席研究員・南武志氏は「景気が持ち直す方向にあるとの見方も企業経営者の中には広がっている。 年度下期にかけて、円高定着など企業業績には不安材料も残るが、設備投資は緩やかに増加する」と予想している。

機械受注統計は機械メーカーの受注した設備用機械について毎月の受注実績を調査したもの。 設備投資の先行指標として注目されている。 (Reuters = 10-12-16)

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7 月の機械受注、前月比 4.9% 増 基調判断を上方修正

企業の設備投資の先行指標となる機械受注統計で、変動の大きい船舶・電力をのぞく民需の 7 月の受注額(季節調整値)は、前月を 4.9% 上回った。 内閣府が 12 日発表した。 増加は 2 カ月連続。 前月に続いて高水準を維持しており、基調判断を「足踏みがみられる」から「持ち直しの動きがみられる」に上方修正した。 判断の上方修正は昨年 10 月以来、9 カ月ぶり。

受注額は 8,919 億円。 内訳は製造業が 0.3% 増、非製造業(船舶・電力を除く)が 8.6% 増で、ともに 2 カ月連続で伸びた。 製造業では、発電所などで使う化学機械の受注が増加。 非製造業では、今年に入って低迷していた通信業からの受注が大幅に増えて全体を引き上げた。 (asahi = 9-12-16)

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6 月の機械受注、3 カ月ぶり増加 8.3% 内閣府

企業の設備投資の動きを示す機械受注統計で、変動の大きい船舶・電力をのぞく民需の 6 月の受注額(季節調整値)は、前月を 8.3% 上回った。 内閣府が 10 日発表した。 増加は 3 カ月ぶり。 航空機などの大型受注の影響で増加に転じたが、基調判断は「足踏みがみられる」で据え置いた。 受注額は 8,498 億円。 内訳は製造業が 17.7% 増、非製造業(船舶・電力を除く)が 2.1% 増だった。 ただ、前月まで 2 カ月間の落ち込みが大きく、4 - 6 月期の受注額は前期比で 9.2% 減。 マイナスは 3 四半期ぶりで、内閣府の見通し(3.5% 減)を大幅に下回った。 7 - 9 月期の予測は、前期(4 - 6 月期)と比べ、5.2% 増と見込んだ。 (asahi = 8-10-16)

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5 月の機械受注、2 カ月連続の前月割れ

企業の設備投資の動きをいち早く示す機械受注統計で、変動の大きい船舶・電力をのぞく民需の 5 月の受注額(季節調整値)は、前月を 1.4% 下回った。 内閣府が 11 日発表した。 減少は 2 カ月連続。 基調判断は「足踏みがみられる」と下方修正し、2015 年 9 月以来の表現となった。 (asahi = 7-11-16)

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機械受注 4 月、予測大幅に下回る 11% 減 円高と海外減速で慎重化

[東京] 内閣府が 9 日に発表した 4 月機械受注統計によると、設備投資の先行指標である船舶・電力を除いた民需の受注額(季節調整値)は、前月比 11.0% 減の 7,963 億円だった。 製造・非製造ともに減少し、2014 年 5 月以来およそ 2 年ぶりの大幅減となった。 内閣府では、外需の減少や円高による投資慎重化などの影響が徐々に表れてきているとみている。 ロイターの事前予測調査では 4 月は同 3.8% 減と予想されていたが、これを大きく下回る結果となった。 前年比では 8.2% 減。 3 月の大型案件の反動減も影響しているとはいえ、3 カ月移動平均でも年初来で減少傾向となっている。

製造業は前月比 13.3% 減で、前月の非鉄金属などからの大型受注の反動減が表れた面もある。 非製造業(除く・船舶電力)は同 3.9% 減で、2 カ月連続の減少となった。 建設業や運輸・郵便業、通信業や情報サービス業が 2 カ月連続の減少となったことが背景にある。 内閣府では「年初からの円高や海外減速の影響がじわじわと出てきている」とみている。 産業機械・工作機械の受注減少傾向や、外需の受注額が昨年秋以降、急激に水準を落としていることなどにも、その影響が表れているとみられる。

こうしたことから、内閣府は機械受注の判断を「持ち直しの動きがみられる」と据え置いたものの、「4 月の実績は大きく減少した」と付け加えた。 機械受注は 1 - 3 月まで 2 四半期連続で前期比増加を続けてきた。 民間調査機関の間では、低金利や更新需要で設備投資は底堅いとみる向きが多かったが、ここへきて投資姿勢が慎重化しているのではないかとの見方も浮上。 内閣府発表の 4 - 6 月見通しも、前期比 3.5% 減と 3 四半期ぶりの減少となっている。

市場では「全体の内容は良くなく、景気後退色を強める内容。 熊本地震の影響が出ているのかもしれないが、今後の生産活動が停滞する可能性がある。 株安・債券高の材料だ。(国内金融機関)」との見方が出ていた。 株式市場でも、円高地合いに加え、機械受注の予想比下振れが上値を抑える要因になっているという。 (Reuters = 6-9-16)


上半期の倒産件数は 3.9% 減 26 年ぶり低水準に

東京商工リサーチが 11 日発表した 2016 年度上半期(4 - 9 月)の全国の企業倒産件数(負債額 1 千万円以上)は、前年同期比 3.9% 減の 4,217 件だった。 上半期としては 8 年連続の減少で、バブル期の 1990 年度上半期以来、26 年ぶりの低水準となった。

大手企業の業績改善による景気の底上げや、金融機関が中小企業への融資で返済猶予に応じていることが要因だった。 一方で、東京商工リサーチは「今後、為替変動など新たなリスクや消費者の節約志向の高まりで中小企業を中心に倒産は増える懸念もある」とした。 業種別では、全 10 業種のうち製造業など 7 業種で減少した。 地域別では、全 9 地域のうち 6 地域で減ったが、東北と北陸、中国は増えた。 負債総額は、大型倒産が少なかったため 29.2% 減の 6,626 億円だった。 同時に発表した 9 月の全国倒産件数は前年同月比 3.4% 減の 650 件だった。 (sankei = 10-11-16)


日本の成長率予想を引き上げ IMF、今年 0.5% に

国際通貨基金 (IMF) は 4 日、最新の世界経済見通しを公表した。 日本の成長率見通しは、消費増税の先送りや今夏に打ち出した経済対策などを受け、7 月の前回予想から引き上げた。 米国経済の減速や英国の欧州連合 (EU) からの離脱決定で先進国全体の見通しは引き下げたものの、新興国の予想は引き上げており、世界全体の成長率見通しは据え置いた。

日本の今年の成長率見通しは前回から 0.2 ポイント引き上げて 0.5% に、来年の見通しは 0.5 ポイント引き上げて 0.6% とした。 それでも、主要 7 カ国 (G7) では最も低い成長率で、「人口減少などを反映し、日本の中期的な見通しは弱いままだ」と指摘している。 世界全体の成長率見通しは今年が 3.1%、来年が 3.4% で、それぞれ据え置いた。 米国の今年の見通しは、企業による設備投資の低迷などによる年前半の減速を受けて 0.6 ポイント引き下げ、1.6% とした。 ロシアやインドなど新興国の見通しは引き上げた。

IMF はここ数カ月で高まったリスクとして、「政治的な不協和音や内向きな政策」などを挙げた。 6 月の英国の EU からの離脱決定や、11 月の米大統領選での議論が「国境を超えた経済統合の恩恵への民意のほころびを示している」と指摘。 保護主義的な風潮が強まれば、企業による投資や雇用、貿易などに悪影響を与えると警告した。 (ワシントン = 五十嵐大介、asahi = 10-5-16)

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GDP 実質成長率、年率 0.7% 増に上方修正

内閣府が 8 日発表した 2016 年 4 - 6 月期の国内総生産 (GDP) の 2 次速報は、物価変動の影響をのぞいた実質成長率が前期(16 年 1 - 3 月期)より 0.2% 増だった。 この状態が 1 年間続いた場合の年率換算で 0.7% 増。 最新の統計データで企業の設備投資や公共投資がそれぞれ上方修正されたことから、8 月発表の 1 次速報(年率 0.2% 増)を上回った。

プラス成長は 2 四半期連続。 1 次速報後に公表された「法人企業統計」を反映した結果、設備投資は前期比 0.1% 減と、1 次速報の同 0.4% 減からマイナス幅が縮小。 不動産業や鉄鋼業が好調だった。 公共投資も、1 次速報の 2.3% 増から 2.6% 増へとプラス幅が拡大した。 民間在庫の増加も GDP 上はプラスに寄与した。 GDP の 6 割を占める個人消費は 0.2% 増と 1 次から変化はなく、全体としては小幅な修正にとどまった。 輸出も 1 次と同じ 1.5% 減と低調で、日本経済が足踏みを続けている状況に変わりはない。

物価の動きを反映した名目 GDP は、前期比で 0.3% 増(年率換算で 1.3% 増)となり、1 次速報の同 0.2% 増(同 0.9% 増)から上方修正した。 みずほ総合研究所の徳田秀信氏は「円高で企業収益は目減りし、個人消費も力強さに欠ける。 景気は、昨年半ばからの踊り場を脱しておらず、今後も経済対策など官公需に依存する状態が続くだろう」とみる。 (中村靖三郎、asahi = 9-8-16)

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GDP 実質成長率、年率 0.2% 増 2 四半期連続プラス

内閣府が 15 日発表した 4 - 6 月期の国内総生産 (GDP) の 1 次速報は、物価変動の影響を除いた実質成長率が前期(1 - 3 月期)比で 0.0% 増だった。 この状況が 1 年続いた場合の年率に換算すると 0.2% 増。 住宅投資や公共投資の伸びが全体を押し上げて 2 四半期連続のプラス成長となったが、企業の設備投資や個人消費は低迷が続いており、景気は横ばいから抜け出せずにいる。

日本銀行が 2 月にマイナス金利政策を導入し、住宅ローン金利が過去最低水準まで低下した影響で、住宅の購入が増加。 歴史的な低金利を背景に、住宅投資が 5.0% 増と大幅に増えた。 増加は 3 四半期ぶり。 新設住宅着工戸数は高水準を維持している。 公共投資も 2.3% 増と 2 四半期連続でプラスになった。 東日本大震災の復興事業を含む昨年度の補正予算の執行などが寄与した。

一方、企業の設備投資は 0.4% 減で、2 四半期連続で減った。 船舶や工作機械などで減少が目立った。 円高基調を背景に企業収益は頭打ちになっているとの見方も出ており、内閣府幹部は「今後、注視が必要」と話す。 輸出も 1.5% 減と、2 四半期ぶりに減少に転じた。 欧州向けが低調だったほか、輸出に区分される訪日外国人客の消費が 4.5% 減と 14 四半期ぶりに減少に転じたことも響いた。

GDP の約 6 割を占める個人消費は 0.2% 増。 2 四半期連続のプラスとなったが、力強さを欠いたままだ。 衣類などの販売が低調だった。 4 月の熊本地震で旅行などが落ち込んだことも国内消費を押し下げた。 第一生命経済研究所の新家義貴氏は「住宅投資や公共投資が押し上げ要因となったが、全体の成長率は非常に小さい。 景気には停滞感が残り、踊り場状態が続いている」とみている。

石原伸晃・経済再生相は 15 日の会見で「企業の業況判断は先行きに対して慎重さを増している。 経済対策をしっかり実施することで内需を拡大していくことが肝要になってくる」と話した。 物価の動きを反映した名目成長率は前期比 0.2% 増(年率換算は 0.9% 増)だった。 (中村靖三郎、asahi = 8-15-16)

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経済対策、あす閣議決定へ 実質 GDP 1.3% 押し上げ狙う

[東京] 政府は、事業規模 28.1 兆円の経済対策を 2 日夕に閣議決定する。 対策では、安倍首相が掲げる 1 億総活躍社会の実現に向けた子育て支援拡充や、リニア中央新幹線の建設前倒しを柱とするインフラ整備を盛り込み、国内総生産 (GDP) を実質ベースで 1.3% 程度押し上げたい考え。 対策は、事業規模を 28.1 兆円、財政措置を 13.5 兆円とし、1 億総活躍社会の実現加速に 3.5 兆円(財政措置 3.4 兆円)、21 世紀型のインフラ整備に 10.7 兆円(同 6.2 兆円)、英国の欧州連合離脱に伴うリスク対応に 10.9 兆円(同 1.3 兆円)、熊本地震や東日本大震災からの復興に 3.0 兆円(同 2.7 兆円)をそれぞれ計上する。

これとは別に、金融機能強化法に基づく公的資金枠(政府保証枠 12 兆円)や、銀行等株式保有機構による株式などの買取限度額(同 20 兆円)の時限措置を延長し、金融情勢に応じた予備的措置を講じる方針だ。 財政措置のうち、国・地方の歳出は 7.5 兆円、財政投融資は 6.0 兆円となる。 国・地方の歳出のうちの国費は 6.2 兆円、一般会計の 16 年度追加は 4.0 兆円とし、政府は、必要となる歳出を盛り込んだ 2016 年度 2 次補正予算案を秋の臨時国会に提出する。

併せて決定する 17 年度予算の概算要求基準の基本方針では、裁量的経費を 10% 削減する一方、経済成長に向けた優先枠を設けており、対策の一部は来年度予算案にも盛り込まれる見通しだ。 (Reuters = 8-1-16)


景気牽引役、見当たらず 9 月短観、円高が先行きに影

日本銀行が 3 日公表した 9 月短観は、大企業・製造業の景況感が 2 期連続の横ばいだった。 熊本地震からの回復や政府の経済対策といった一時的な要因が支えで、円高の影響が出ている。 非製造業は悪化が続き、消費は勢いに欠ける。 製造業、非製造業ともに力強さに欠ける内容だ。 大企業・製造業で改善したのは、熊本地震で止まった工場が再開した自動車や、新型 iPhone 向け部品の需要が増えた電気機械などだ。 英国の欧州連合 (EU) 離脱決定は景況感に影響しなかった。

ただ先行きは円高が影を落としている。 今回調査で造船・重機などは円高で景況感が悪化した。 大企業・製造業の想定為替レートは 1 ドル = 107 円と、前回調査から 3 円超円高方向に修正された。 最近は 101 円台で、さらに円高に修正される可能性がある。 自動車などは収益悪化要因になる。 海外経済も米国以外は低調な状況が続く。 大企業・製造業の先行きの DI は横ばいだ。 大企業・全産業の収益は前年度比でマイナスの見通しで、設備投資計画の伸びも鈍い。 「さらに円高が進めば設備投資にも慎重になる。(SMBC 日興証券の宮前耕也氏)」

非製造業も伸び悩みが目立つ。 大企業・非製造業の DI はプラス 18 で、水準自体は比較的高いが、3 四半期連続で悪化した。 消費増税後の国内消費の低迷をカバーしてきた訪日外国人の買い物需要が一段落し、再び消費の停滞感が目立ってきている。 家計消費が減り、消費者物価指数のマイナスが続くなど、「デフレ」に再び陥る懸念が出ている。 日銀は金融政策を金利重視に見直して、「物価上昇率 2%」を目指しているが、景気の牽引役が見当たらない状況だ。 (土居新平、asahi = 10-3-16)


デフレ脱却、黄信号か 東京都区部の物価下落

政府と日銀が目指すデフレ脱却に黄信号がともり始めた。 総務省が 30 日発表した消費者物価指数 (CPI) によると、8 月の生鮮食品を除く総合指数は前年同月比 0.5% の下落で、6 カ月連続で前年同月を下回った。 原油安による電気代やガソリン代の下落が物価全体を押し下げる構造は従来と変わらず、食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数は 0.2% の上昇だった。 だが上がり幅は 13 年 10 月(0.3% 上昇)以来で最小。 市場関係者は、先行指標として公表される東京都区部の 9 月の動向に注目している。

総務省は東京都区部の CPI を、9 月中旬時点の速報値として公表する。 食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数は 9 月、0.1% 下落した。 前年同月を下回るのは 2 年 11 カ月ぶりだ。 品目別に見ると、通信が 2.8% 下落した。 特にスマートフォン(スマホ)を含む携帯電話機が 8.3% と大きく下がった。 折しも 9 月中旬には米アップルのスマホ「iPhone (アイフォーン)」の新機種が発売されたばかり。 他のメーカーも新製品を投入する時期だが「性能が向上しても価格は横ばい、または値下がりしている。(総務省)」

総務省は今春、携帯電話各社に端末を過剰に値引きする「実質 0 円」販売をやめるよう要請したが、販売各社は指針に触れない、独自の割引手法を思案しているとみられる。 テレビも 21% 下落と大きく下がっている。

都区部の通信分野の値下がりは、9 月の全国の動向に影響する。 SMBC 日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは「物価の実力はゼロに近づいていく」とみる。 日銀は独自に、生鮮食品・エネルギーを除く CPI を公表し、加工食品や菓子の値上げ効果を反映している。 だが宮前氏は「円高による食品の輸入価格押し下げの影響はこれから表れる。日銀版コアも上昇期待は小さい」と指摘する。 (nikkei = 9-30-16)

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8 月消費者態度指数が改善、物価上昇見通しは減少 = 内閣府

[東京] 内閣府が 2 日に発表した 8 月消費動向調査によると、消費者態度指数(2 人以上の世帯・季節調整値)は、前月から 0.7 ポイント上昇し 42.0 となった。 2 カ月ぶりに改善した。 内閣府は消費マインドは「足踏みがみられる」として前月の判断を据え置いた。 「暮らし向き」、「雇用環境」、「耐久消費財の買い時判断」、「収入の増え方」の全ての項目が改善した。 1 年後の物価見通しについては、「上昇する」との回答が 1.7 ポイント減少して 70.5% と 2 カ月ぶりに減少。 5 月までの 78 - 80% 前後の水準に比べると低いままの状態が続いている。 (Reuters = 9-2-16)

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7 月消費者態度指数は 0.5 ポイント低下、3 カ月ぶり悪化 = 内閣府

[東京] 内閣府が 2 日に発表した 7 月消費動向調査によると、消費者態度指数(2 人以上の世帯・季節調整値)は、前月から 0.5 ポイント低下し 41.3 となった。 3 カ月ぶりに悪化した。 内閣府は消費マインドは「足踏みがみられる」として前月の判断を据え置いた。 内訳項目のうち、「暮らし向き」を除き、「雇用環境」、「耐久消費財の買い時判断」、「収入の増え方」が悪化した。 1 年後の物価見通しについては、「上昇する」との回答が 0.4 ポイント増加して 72.2% と 3 カ月ぶりに増加したが、5 月までの 78 - 80% 前後の水準に比べると低いままの状態が続いている。 (Reuters = 8-2-16)


「緩和の泥沼」から抜け出したい 透ける日銀の本音

企業収益が好調で雇用統計が改善しても、日本銀行は金融市場から追加緩和を迫られてきた。 「インフレ目標を達成するまではお金の量を増やし続けるのだろう?」と。 景気が停滞していれば、なおさらだ。 こんな「緩和の罠」から逃れたい、というのが日銀の本音だろう。 長期金利の目標を設けた政策修正は、その泥沼から抜け出す一歩だ。 ポイントは、異次元緩和の大黒柱「量的緩和」を今後、事実上縮小できるかどうかである。

黒田東彦(はるひこ)総裁は、市場に大量のお金を流せば、「必ず物価は上がる」と説明してきた。 だが物価は上がらず、この 3 年半で結果ははっきり出た。 日銀は「量」から「金利」に軸足を移したが、引き続き国債を買って大量のお金を流し続ける政策も続ける。 やめられないのは、日銀が事実上財政の支え役になってしまったからだろう。 巨額の赤字財政は、緩和による超低金利で国債を発行して支えられている。

深刻なのは安倍政権がそれに甘え、財政規律をゆるめていることだ。 2 回にわたる消費増税の延期、大規模な経済対策である。 財政が金融政策への依存を強めつつある。 黒田総裁はそれを恐れ、ひとまず「量」の拡大に歯止めをかけたのではないか。 財政の金融政策への依存をこれ以上強めないために、日銀は緩和をいたずらに拡大せず、将来の縮小にも備えることだ。 そして、たとえ政権の求めがあっても、追加緩和を乱発しない強い覚悟が求められる。 (編集委員・原真人、asahi = 9-21-16)


カープ効果、地価も 25 年ぶりアップ 球場移転や再開発

20 日公表の基準地価は、東名阪の 3 大都市圏に加え、広島など地方の主要都市の上昇が目立った。 再開発計画が進む都市の中心部に投資が集中し、地価を押し上げる構図だ。

球場移転でファン往来

JR 大阪駅に隣接する複合施設グランフロント大阪に 8 月、米保険大手 AIG グループの日本法人が東京に次ぐ第 2 の本社を開いた。 大阪府内 6 カ所にあったグループ会社の一部も集約し、5 フロアに 1 千人以上が働く。 広報担当者は「駅に近い利便性は決め手の一つになった」と話す。 最近、大手企業が拠点を集約したり、広げたりする際、移転先に都心の物件を選ぶ例が増えている。 好業績を背景に、立地が良く高価格の物件でも出て行く余力が出てきたためだ。

好調なオフィス需要は地価を押し上げる。 大阪府で最も高いグランフロントの地点は典型例で、1 平方メートル当たりの地価が 1,320 万円と 2 年で約 4 割上昇。 大阪市では訪日外国人の増加に合わせたホテル建設も相次ぎ、商業地の地価は 8.0% 上昇と全国の政令指定市でトップの上げ幅だった。 地方の主要都市の地価上昇も目立つ。 県全体で商業地が 25 年ぶりに上昇に転じた広島は、JR 広島駅周辺の再開発が全体を押し上げた。 駅南側に 8 月、中四国地域で最も高い 197.5 メートルのビルが完成するなど、計 4 棟の再開発ビルの完成時期が今年に集中する。

2009 年に広島東洋カープの本拠の球場が駅近くに移転してファンの往来が増えたことで、「目に見える形で人の流れができ、再開発を後押しした」と広島市の担当者は話す。 駅北側でも再開発は進み、「利便性にひかれて郊外から移り住む高齢者も増えている(大和ハウス工業の土谷勝・広島支社長)」という。 札幌や仙台、福岡の各市も中心市街地の再開発で、商業地はいずれも 7% 台の上昇だった。 金沢市は北陸新幹線の開業効果が続き、ホテルや商業施設の建設が相次いでおり、商業地は 5.7% 上がった。

不動産サービス JLL の大東雄人氏は「過熱感がある東京を避け、地方に投資資金が流れている」と指摘する。 日本銀行のマイナス金利政策で市場の金利水準が下がったことで、金融機関や投資家は運用難にあえぐ。 不動産は企業向け融資や債券投資と比べて利回りが見込めると、地方の拠点都市の人気が高まっているという。 (神沢和敬、笠井哲也、田幸香純、asahi = 9-21-16)

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商業地の全国平均、9 年ぶり下げ止まり 基準地価

国土交通省は 20 日、7 月 1 日時点の基準地価を公表した。 商業地の全国平均は前年から横ばい(0.005% 上昇)で、9 年ぶりに下落が止まった。 3 大都市圏(東京、大阪、名古屋の各都心部への通勤圏)に加え、地方の拠点都市でも再開発が加速したことが大きい。 ただ、調査地点の半数以上で下落が続いており、地価上昇に全国的な広がりはまだ見られない。

商業地は、3 大都市圏で 2.9% 上がった。 それ以外では 1.1% 下がったが、札幌、仙台、広島、福岡の「地方中核 4 市」に限ると 6.7% の上昇。 大都市や中核都市の活況が全国平均を引き上げた形だ。 約 5 千の調査地点別でみると、上昇は 3 割超にとどまり、横ばいが 2 割弱、下落が 5 割超となった。 一方、住宅地は全国平均で 0.8% 下がったが、前年の 1.0% 減よりは改善した。 下落率は 7 年連続で縮まっており、0% 台は 9 年ぶりだ。 ただ、約 1 万 5 千の調査地点別でみると、6 割超で下落している。 (石井潤一郎、asahi = 9-20-16)


マイナス金利、金融界の批判止まず 「副作用」指摘続々

日本銀行のマイナス金利政策に大手金融トップから批判的な発言が続いている。 日銀は金融緩和で金融機関を通じて大量のお金を市場に流し、両者は協力し合う関係だが、マイナス金利は金融機関にデメリットが出ている。 日銀は 20 - 21 日の金融政策決定会合で緩和策を検証し、追加緩和の必要性を議論するが、マイナス金利幅を拡大すれば批判が強まる可能性がある。

生命保険協会の根岸秋男会長(明治安田生命保険社長)は 16 日の会見で、「マイナス幅が拡大されれば副作用が大きくなる。 慎重に判断して頂きたい。」と述べた。 マイナス金利政策で長期金利が下がり、国債の利回りが低下。 国債などで運用する積み立て型の保険商品は利回り確保が難しく、保険料値上げや販売停止が続く。 根岸氏は「低金利が続けば傾向は変わらない」と語った。 日本損害保険協会の北沢利文会長(東京海上日動火災保険社長)は 15 日、「副作用に十分に配慮してほしい」と述べた。

銀行は金利低下で収益が減り、貸し出しペースが鈍りかねない。 全国銀行協会の国部毅会長(三井住友銀行頭取)は 15 日、「本来のベネフィット(効果)も損なわれかねない」とした。 大手行首脳は「マイナス金利幅の拡大はやめてほしい。 政策自体をやめて欲しいくらいだ。」と牽制する。 (真海喬生、久保智、sahi = 9-19-16)

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銀行の貸出残高、2.1% 増 不動産向けなど好調

日本銀行が 8 日発表した 7 月の「貸出・預金動向」の速報によると、全国の銀行の貸出残高は、前年同月比 2.1% 増の 434 兆 3,092 億円だった。 企業の合併・買収 (M & A) や不動産向けが好調で、伸び率は前月の 2.0% を上回った。 個人や企業が銀行に預けた預金残高は、前年同月比 3.5% 増の 655 兆 5,900 億円。 特に、メガバンクなど都市銀行が同 4.9% 増で昨年 8 月以来の伸びとなった。 収益が好調な企業からの預金が増えたという。 (asahi = 8-8-16)

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大手銀に逆風、2 年連続の減益 金利低下・海外事業陰り

大手銀行 7 グループの 2016 年 3 月期決算が 16 日出そろった。 最終的なもうけを示す純利益の合計は前年比 5.5% 減の 2 兆 7,242 億円で 2 年連続の減益。  日本銀行の大規模緩和や競争激化による金利低下で、国内の貸し出しから得られる収益が減っている。 好調だった海外事業にも陰りが見え始めている。 2 年連続の減益となった三井住友フィナンシャルグループ (FG) は、利ざやの縮小で貸し出しから得られる収益が前年に比べて 822 億円減った。 国内向けの貸出残高は 1 年で 1% 以上増えたが、貸出利ざやは平均で 0.08% 幅下がり、1.21% となった。 3 年前の 1.49% からは 0.3% 幅近い低下だ。

貸し出しが増えても収益につながらないのは各銀行共通の課題。 国内の貸し出しで得られる収益は、新生銀行を除く 6 グループの合計でもこの 1 年間で 5% ほど減った。 みずほ FG の佐藤康博社長は「残念だが、利ざやが縮小する傾向は間違いなく続く」と話す。 各行とも金利収入に左右されないよう、国内では投資商品の販売や富裕層向けの資産運用など手数料ビジネスを強化していく方針だ。 (久保智、asahi = 5-16-16)