一人っ子政策に子を失った親たちが抗議 北京に約 1 千人
一人っ子政策を続けてきた中国で、唯一の子を事故や病気などで失った親ら 1 千人前後が 18 日、北京に集まり、政府に暮らしと老後のケアを訴える騒ぎがあった。 中国は今年、二人っ子の時代に入ったが、「政策の犠牲になった者の存在を忘れるな」と訴えた。 北京の警備が年々厳しさを増す中、1 千人規模の抗議活動は異例だ。 政府の国家衛生・計画出産委員会のビルの前で、中国各地から集まった人々が「失独者(一人っ子を失った親)」とかかれた白い帽子をかぶって「政府のサポートが足りない」と抗議。 警官隊が駆けつけて十数台のバスを並べ、抗議の様子を市民の目から遮断した。
湖南省から来た建築業男性 (54) は 2 年前に 26 歳の長男を心臓病で失った。 「政府は、一人っ子政策に従えば暮らしは安定すると説明してきた。 その言葉を信じた我々の老後を守る責任があるはずだ。」と憤る。 親たちは「地元政府に訴えても、中央の指示がないとの理由で聞き流されている」と口をそろえる。 1 月の「二人っ子」解禁で、「早く政策転換されていれば」との思いも強い。 抗議は 1 カ月余り前にネットで呼びかけられたという。 (北京 = 林望、asahi = 4-19-16)
「実家に帰らない子供は処罰」中国の大都市が制定した条例の狙いとは?
中国・上海市は、成人した子供たちが実家を訪れることを条例で義務化しようとしている。 4 月 6 日に開かれた記者会見で上海市当局は、「両親と一緒に暮らしていない子供は実家を訪ねるか頻繁に手紙を送らなければ、処罰される可能性がある」と発表した。 違反した場合、親は子供を訴えることができるようになる。 その場合、子供は裁判所から、実家に戻ったり、老人ホームを訪れたりするよう命じられるだろう、と上海市・法務課のルオ・ペイシン副課長は語った。
裁判所の命令に応じない場合、「ブラックリスト」に入れられる可能性がある。 ブラックリスト入りすると、銀行口座を開設したりローンを組んだりするのが難しくなると、中国の国営メディア「新華社通信」が運営するリファレンスニュースは伝えている。 中国メディアの中には、「実家を訪れない子供は、ひき逃げや地下鉄で無賃乗車をする人と同じ」と書かれているものもある。
この「上海の高齢者を守るための規制」と呼ばれる条例は、1 月 29 日に「上海市人民代表大会」で採決され、5 月 1 日より実施される。 ニュースサイト「澎湃新聞」は実家を訪ねることは、子供がモラル上の義務を果たすだけではなく、親に精神的な安らぎを与えることになる、と伝えている。
親孝行や目上の者を敬うことは、儒教の重要な思想の一つだ。 何世紀にもわたって中国社会で受け継がれていて、それは現代でも変わらない。 条例を制定した別の理由として考えられるのは、上海の高齢化だ。 子供たちが頻繁に実家を訪ねて親を助けることで、年金費用を補いたいという考えがある、とリファレンスニュースは書いている。 上海市では 60 歳以上の人が市の人口の約 30% を占めていて、この数値は今後数年で増えるだろうと考えられている。
中国の人気 SNS 「ウェイボー」では、幸せでない生い立ちを持つ子供にも、この条例を義務づけることに対して、懸念の声が上がっている。
「良い両親でなかったら? 我が子を虐待したり、女の子より男の子を大事にしていたら? 差別行為をしていたら? それでも子供たちはなお頻繁に実家を訪ねるよう義務付けられるのだろうか。 罰金を払わなくちゃいけないのだろうか。」
「実家を訪ねることでさえ、法で決める問題になってしまったのか。 ため息が出る。」
「実家を訪ねるかどうかは、生い立ちに関係している。 なぜそれを法律で決めなければいけないのだろう。」
中国政府はこれまでにも、家族の問題に関与してきた。 1979 年には増え続ける人口を抑えるために一人っ子政策を発表。 しかし高齢者を支える若者が減ってきたため、2015 年 10 月に廃止した。 (Alexandra Ma、The Huffington Post = 4-15-16)
「パナマ文書」、中国当局が報道規制 記事削除や検索制限も
[北京] パナマの法律事務所から機密の金融取引文書、いわゆる「パナマ文書」が流出した事件をめぐって、中国当局は報道規制をかけている。 オンラインニュースの一部の記事を削除したり、検索も制限しているようだ。 「パナマ文書」では、世界の著名人や資産家によるタックスヘイブンを利用した課税逃れや資金洗浄の実態が暴かれているとされる。 文書には、ロシアのプーチン大統領の友人のほか、英国、アイスランド、パキスタン各国首相の親族、ウクライナ大統領らの名前が上がっている。
文書に含まれる情報の一部を報じた国際調査報道ジャーナリスト連合 (ICIJ) によると、文書には中国の習近平国家主席など、同国の現職・旧指導部の一族に関連したオフショア企業が入っているという。 中国政府からは「パナマ文書」について、公式な発表などはない。 ロイターは国務院広報室にコメントを求めたが、現時点で回答はない。
中国国営メディアは「パナマ文書」をほとんど報道していない。 中国の検索エンジンで「パナマ」をサーチすると、この件に関する中国メディアの記事が出てくるが、リンクの多くは機能しないか、もしくは、スポーツスターをめぐる疑惑に関連した記事に飛ぶようになっている。 (Reuters = 4-5-16)
中国全土でスト激増、体制脅かす事態に政府が懸念
中国全土で景気の減速に伴い、従業員のストが激増している。 中国政府は国家を脅かす脅威とみなして摘発に力を入れるが、国有企業では大規模な人員削減が予定され、事態の一層の悪化も予想される。 四川省でこのほど、未払い賃金に抗議したとして起訴された出稼ぎ労働者 8 人に対し、禁錮 6 - 8 カ月の判決が言い渡された。 数百人の地元住民が集まった広場には「社会行政秩序を著しく乱す犯罪」を非難する横断幕が掲げられ、「未払い賃金の要求は理性的な努力で」と呼びかける。
香港を拠点とする労働者の権利団体「中国労工通訊 (CLB)」によると、2011 年から 13 年にかけて中国全土で実施されたストや抗議運動は 1,200 件前後だった。 それが 14 年には 1,300 件を超え、15 年は 2,700 件強に激増。 特に広東省では 1 日に 1 件を超す頻度で実施された。 16 年に入ってもこの傾向は続いている。
スト件数が過去最高に達する中で、中国政府は国有企業の大規模な縮小に乗り出し、鉄鋼と石炭業界の労働者 180 万人あまりの削減を打ち出した。 国営メディアによると、政府は解雇された労働者の再就職支援のため、2 年間で 1,000 億人民元(約 1 兆 7,000 億円)を拠出する方針。
賃金紛争や労働問題を巡る苛立ちが暴動に発展したケースもある。 1 月には北西部の寧夏回族自治区で、建設会社との金銭トラブルが発端となって出稼ぎ労働者がバスに放火し、17 人が死亡した。 中国の労働運動は、南部の南海にあるホンダの自動車部品工場で 2010 年に実施されたストが転機だった。 製造ラインにいた 23 歳の出稼ぎ労働者の男性が「こんな低賃金で働いてはいけない」と叫んで非常停止ボタンを押した。
工場の庭に集まった若い労働者は数十人から数百人に膨れ上がり、ほぼ全従業員が参加して 19 日間のストを展開。 製造の中断を余儀なくされて、経営陣と中国政府はやむなく要求に応じた。 労働者側が全面的に勝利した極めてまれなケースだった。 ホンダは和解内容や労働者との交渉内容について公にはコメントしていない。
同年夏には多数のストが実施され、労働者側が大幅な昇給などを勝ち取ったという。 中国の労働運動はすべて、中国共産党が 1925 年に設置した労働組合「中華全国総工会 (ACFTU)」の統制下で行われ、この枠外で労働運動を組織しようとしたり交渉しようとしたりすれば、国家権力に対する攻撃とみなされる。 政府当局者は現行の労働法に対する批判も強める。 国営新華社通信によると、楼継偉財政相は現行の労働契約法について、従業員が過剰に保護されており、雇用主による新規採用や研修への投資意欲がそがれるとともに、従業員の解雇などの対応が難しいとして批判したとされる。
中国国有の本渓鋼鉄集団は、世界の鉄鋼需要の落ち込みを受けて大幅な賃金カットを実施し、従業員多数を解雇した。 ある従業員は、いったん解雇された後に日雇いで再雇用され、医療保険などの福利厚生が受けられなくなったと証言する。 ストや抗議運動の増加を受けて、労働者支援活動を行っている非政府組織 (NGO) の摘発も強化された。 米議会中国特別委員会によれば、広東省だけで昨年 12 月に労働者の権利を訴える活動家 18 人が拘束され、20 人以上が尋問されたという。
このため関係者の間に不安が広がり、多くの NGO は活動を続けることがほとんど不可能になった。 国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチのマヤ・ワン氏によれば、中国政府は労働者の間で政治に対する意識が高まって運動が拡大し、国家権力を脅かす事態になることを恐れているという。
今回、政府はかつてない不安定化に直面し、これまでよりもずっと大きな抵抗に遭うだろうと活動家のウー・ギジュン氏は予想。 「労働者はかつて自分たちの権利についてほとんど認識していなかった。 しかし今では問題にぶつかると、あきらめるのではなく、自分たちの権利のために抗議することをまず考えるようになった。」と指摘している。 (CNN = 4-3-16)
中国人の海外旅行に新たな目的 : C 型肝炎治療
中国人はこれまで、米国にがんの治療に出かけたり、日本を訪れて風邪薬や鎮痛剤を買い占めたりしてきた。 今はさらに別の医療目的の海外旅行が増えている。 肝疾患の治療だ。 C 型肝炎の治療はここ数年で画期的に進展している。 しかし、ほんの数カ月間で患者の 90% 以上が治ることが示されている直接作用型抗ウイルス薬のどれもが、中国ではまだ規制当局に承認されていない。 中国ではいまだに、インターフェロンの投与をはじめとする旧世代の治療法が行われている。 頭痛や脱毛といった激しい副作用が伴うものだ。
中国北東部の遼寧省瀋陽市に住むサン・ウェイさん (46) は、1 年間にわたって毎週インターフェロンの投与を受けたが、C 型肝炎が治っていなかった。 体重は 42 キロも落ち、激しい関節痛に襲われた。 「全く食欲がなく、家事をする気力もほとんどなかった。 60歳以上に老けて見えた。」
サンさんは昨年 10 月、上海に本社を置く企業の支援を受けてニューデリーに向かった。 海外に出るのは初めてのことだった。 米バイオ製薬ギリアド・サイエンシズの C 型肝炎ウイルス治療薬「ソバルディ」を 3 カ月分ほど手にして戻ってきた。 この薬は中国ではまだ試験段階だ。 現在、サンさんは C 型肝炎検査で陰性だという。
中国では C 型肝炎患者が増加しており、現在では約 1,000 万人いるとみられている。 そうしたなか、複数の中国企業が患者向けに、インドなどへの治療専門の旅行を斡旋している。 インドではソバルディのほか、ギリアドの「ハーボニ」が米国と比較して大幅に安い値段で販売されている。 また、ラオスやバングラデシュでは後発医薬品(ジェネリック)も手に入る。
例えば、上海に本社を置く康安途が提供する 4 日間のインド往復の費用は 3 万 5,000 元(約 60 万円)で、これには医薬品や診察の費用のほか、航空券代、4 つ星ホテルでの宿泊代、ニューデリーの半日観光費用も含まれている。 旅行に申し込んだ患者は病院に運ばれ、医者が処方する経口薬を服用することになる。 北京に本社を置く天健行が提供するバングラデシュ行きの同じようなパッケージ旅行の費用は 3 万元だ。
ファウンダー・セキュリティーズの最近のリポートでは、C 型肝炎治療を目的とした中国人の海外旅行は 500 億ドル以上の市場規模である可能性があると試算している。 同リポートでは、具体的な渡航者人数などには触れていない。
中国国家食品薬品監督管理局 (CFDA) の統計によると、ギリアドと米ブリストル・マイヤーズスクイブ、米バイオ製薬アッヴィの C 型肝炎治療薬はいずれも中国では臨床試験段階で、近い将来の承認を目指している。 ファウンダー・セキュリティーズは、ソバルディやハーボニの価格が妥当なものになれば、中国で爆発的な売り上げになると予想している。 ハーボニは 2015 年には世界で 2 番目に良く売れた医薬品で、売上高は 138 億ドルに達した。 (Fanfan Wang、The Wall Street Journal = 4-1-16)
中国の養豚家が大量廃業、主要輸出国に好機到来か
[北京/シンガポール] 中国の養豚業界は規制強化などで小規模農家が大量に廃業に追い込まれたため、豚肉価格が持ち直しても生産能力がなかなか回復しない。 このため豚肉は品不足から年内いっぱい価格が高止まりし、輸入が増大する見通しだ。 中国は豚肉の生産と消費が世界最大で、消費量は全世界の供給量の半分程度に達する。 業界筋によると、今年の豚肉輸入は最大 100 万トンを超え、昨年の 77 万 7,000 トンから最低でも 28% 増えそうだという。 中国はこれとは別に豚耳や豚足などを豚肉とほぼ同量輸入している。
ドイツ、米国、ブラジルなど豚肉の主要輸出国には追い風が吹きそうだ。 中国の養豚産業は年間生産量 5,400 万トンの約半分を占める小規模農家が製品価格に敏感に反応しがちなため、好況と不況を定期的に繰り返す。 しかし昨年末に価格が反発したにもかかわらず、飼育頭数は増えそうもない。 これは農家に増産態勢が整っていないためだ。 農務省の統計によると、昨年は小規模の業者を中心に約 500 万の養豚業者が廃業し、これに伴って繁殖用雌豚の飼育頭数が大幅に落ち込んだ。
<苦境の養豚業者>
養豚業者は新たな環境規制により都市部からの移転を余儀なくされ、高額な廃棄物処理装置の設置義務付けなどで直撃を受けた。 農業省の統計によると、2 月の繁殖用雌豚の飼育頭数は前年比 7.9% 減の 3,760 万頭と 30 カ月連続で減少し、過去最低を記録した。 農業省は先週、2012 年と 13 年に均衡していた養豚業者の収支が 14 年と 15 年に 1 頭当たり 100 元(15.36 ドル)の赤字に転落し、繁殖用雌豚の食肉処理が続いていると発表した。
北京オリエント・アグリビジネス・コンサルタントのアナリスト、Xiong Kuan 氏は「養豚業者は飼育頭数を増やしたいのだが、繁殖用雌豚の数が減り、飼育豚の供給量が足りない」と話す。 今年初めに飼育豚の間で感染症がまん延したことも供給源につながったという。
ラボバンク(香港)の畜産アナリスト、パン・チェンジュン氏によると、体重 30 キロの飼育豚の価格はこの 1 年間で 2 倍に跳ね上がって過去最高のトン当たり 1,000 元(154.13 ドル)に達しており、養豚業者はなかなか仕入れができないという。 みずほ銀行(シンガポール)で食品・農産物を担当するジェイ・チョウ氏は「中国の養豚業界は劇的に変わった」と指摘。 飼育頭数が 50 頭以下の零細業者が廃業し、生産が回復する態勢にないと説明した。
<輸入は増加へ>
豚肉は在庫不足から小売価格が急騰し、3 月半ばには 1 キロ = 29 元(4.45 ドル)と前年比 35% 上昇した。 このため豚肉の輸入は大幅に増加。 関税当局のまとめによると、内臓部分を除く 2 月の豚肉輸入は前年比 111% 増の 7 万 4,371 トンとなった。 1 月は 56% 増の 9 万 7,033 トンだった。
業界向けのサイト www.soozhu.com のチーフアナリスト、Feng Yonghui 氏は「価格は年内いっぱい高止まりするだろう」と述べ、今年は中国の豚肉輸入が日本を抜いて世界最大になりそうだと話した。 米農務省の統計によると、日本の処理済み豚肉の年間輸入量は 103 万トン。 (Niu Shuping、Naveen Thukral、Reuters = 3-31-16)
中国、ワクチン違法販売で 37 人を逮捕 = 新華社
[上海] 新華社は 23 日、中国当局がワクチンの違法販売をめぐり、山東省で 37 人を逮捕し、製薬会社 3 社を調査していると伝えた。 中国では 2011 年以降、髄膜炎や狂犬病などの違法ワクチンが全土で販売され、取引額は約 9,000 万ドル相当とみられている。 この問題では、医薬品当局がばらばらのサプライチェーンを規制する上で直面する課題が浮き彫りになった。
李克強首相は 22 日遅く政府ウェブサイトに掲載した声明で、今回の問題で多くの規制上の抜け穴が露呈したとし、当局に徹底的な調査を指示したことを明らかにした。 新華社によると、当局が調査している山東省の製薬会社 Shandong Zhaoxin Bio-tech は営業停止を命じられ、免許が取り消された。 中国最高人民法院(最高裁に相当)がこの案件を直接扱うという。
中国の医薬品規制当局は 22 日、ワクチン購入者の身元について偽の報告をしていた疑いがある国内 6 省のワクチン販売会社 9 社を特定。 山東省の警察によると、同省の親子が業者から違法にワクチンを購入し、国内の数百もの再販業者に転売したもよう。 李首相は、当局はワクチンの製造および流通に関する監督システムを改善すべき、と指摘した。 (Reuters = 3-23-16)
北京の大気汚染は「年中無休」 北京大学がリポート 経済先進地区でも最悪レベル
北京大学光華管理学院と同大学統計科学センターがこのほど発表したリポートによると、中国の経済先進地域として北京、上海、広州(広東省)、成都(四川省)、瀋陽(遼寧省)の 5 カ所を選んで大気汚染の現状を調べたところ、北京は大気汚染の発生が「年中無休」状態だった。 上海のメディアグループ上海報業が運営する情報サイトの「界面」が報じた。
中国にある米国大使館と総領事館では、敷地内で観測した大気汚染の状況を発表しつづけている。 リポートは、米国大使館/領事館が発表する数値と、近くにある中国側の環境保護部門の観測データを総合して、大気汚染の状況を判断したという。 リポートによると、大気汚染が特にひどいのが成都と北京だった。 成都では「極端な汚染が発生する日が多い」特徴がある。 北京は「汚染発生日がとりわけ多い」状況だ。
大気の質が比較的良好とされる広州と上海でも、「大気の質が良好」と判断できる日は、全体の 37% 以下で、「良好」である日は平均で 2 日ほどしか続かなかった。 北京を除く 4 都市では、大気の質は夏にはよくなり、冬に悪化する特徴がある。 ただし、北京では「夏のよい空気」がはっきりとは出現せず、大気汚染が「年中無休」状態になっている。 成都市は、夏には空気の質が比較的良好である場合があるが、冬には極端な汚染が出現するという。
年間を通じてでは、上海と広州では「大気の質が良好」または「軽度の汚染」と判定できた日は、全体の 8 割程度に達した。 成都と瀋陽は 6 割程度。 北京の場合には 5 割程度だったという。 PM2.5 の濃度が最も高いのが北京で、瀋陽、成都、広州、上海の順だった。 リポートは、2014 年は 13 年と比べ、大気汚染はやや改善され、15 年にはさらに改善されたと説明。 ただし、世界保健機関 (WHO) が定める基準と比べれば「汚染ははるかにひどい」状態だという。 (SearChina = 3-21-16)
中国で黄熱病患者が立て続け 北京に続いて上海でも確認
上海市衛生及び計画生育委員会(衛生及び計画出産委員会)は 18 日、同市内で黄熱病患者が確認されたと発表した。 北京市でも 13 日に黄熱病患者が確認されており、中国では北京・上海という二大都市で立て続けに黄熱病患者が見つかったことになる。 上海市で感染が確認されたのは 46 歳の男性。 アフリカのアンゴラの首都、ルアンダで作業員として働いていた。 3 月 5 日に発熱し、翌 6 日に現地の空港を出発し、航空機を乗り継いで中国に向った。 上海に到着したのは 7 日午後 9 時だった。
中国では入国者に対して、赤外線を利用した体温チェックを行っているが、男性の発熱は検知できなかったという。 男性は発熱が続き、病院で診察と治療を求めた。 上海市の衛生当局が 14 日になり、男性から採取したサンプルが、黄熱病感染の陽性反応を示したことを確認。 サンプルを改めて中央政府の疾病予防抑制センターに送った。 同センターも、男性が黄熱病に感染していることを確認したという。
海市当局は、上海は黄熱病を媒介するネッタイシマカの分布地区ではなく、現在は気温も低く蚊の活動期でないとして、感染拡大のリスクは少ないとの考えを示した。 専門家は、黄熱病が発生している地域に行く場合、10 日前にワクチン接種を受けるべきと説明したという。 (Searchina = 3-19-16)
中国、高官の汚職が増加 閣僚級以上 41 人摘発 昨年
中国で 2015 年に汚職で摘発された公務員が 5 万 4,249 人に上ることが 13 日、全国人民代表大会(全人代)の最高人民検察院(最高検)の活動報告で明らかになった。 摘発人数は過去 10 年間で最多だった前年(5 万 5,101 人)より減ったが、高官や多額の汚職事案が増え、政府内の腐敗の根深さが浮き彫りになった形だ。
報告によると、閣僚級以上の幹部では、令計画・前党統一戦線工作部長ら 41 人が摘発され、前年の 28 人を大きく上回った。 100 万元(約 1,700 万円)以上の贈収賄・公金横領事件は 4,490 件で、前年より 22.5% 増加した。
今年の取り組みでは、冒頭に経済犯罪の取り締まり強化を挙げた。 昨年以降、株式市場の混乱が続いて世界的な株安を招いたことを受けたものとみられ、「資本市場の健全な発展を保障する」として金融秩序の安定を図る姿勢を強調した。 また国家安全・社会秩序の維持のため、「敵対勢力の浸透と体制転覆の動きを断固としてたたく」とした。 (北京 = 平賀拓哉、asahi = 3-13-16)
中国が「物言う企業家」のアカウント閉鎖 党批判を受け
中国共産党への忠誠を求める習近平(シーチンピン)国家主席に国営メディアが追従したことを批判した著名企業家が、国営メディアのバッシングを受けたうえ、政府の命令で 28 日、中国版ツイッター「微博」のアカウントを閉鎖される騒ぎに発展した。 アカウントが閉鎖されたのは、「物言う企業家」として 3,700 万人以上のフォロワーを持つ不動産会社会長の任志強氏 (64)。 閉鎖を命じた国家インターネット情報弁公室は「ユーザーは法と社会主義制度、国家利益の限度を守らなければならない」とした。
任氏は自身も共産党員だが、国営メディアが党への忠誠要求を受け入れたことについて、「人民の利益を代表しないメディアは人民に見捨てられる」などと批判。 これを受け、共産主義青年団(共青団)や北京市党委員会系のサイトが、任氏を「反中国勢力の関心を集めようとした」などと批判する寄稿文などを相次いで掲載した。 (北京 = 林望、asahi = 2-29-16)
中国に世界最大級の電波望遠鏡 1 万人に立ち退き迫る
中国内陸部の貴州省で、世界最大級の電波望遠鏡(口径 500 メートル)が稼働するのを前に、約 1 万人が立ち退きを迫られることになった。 国営新華社通信が伝えた。 望遠鏡は今年 9 月に完成予定で、地球外生命体の発見などで成果が期待されているという。 新華社などによると、望遠鏡は貴州省黔南プイ族ミャオ族自治州にある天然のくぼ地を利用してつくられる。 事業費は約 12 億元(約 207 億円)。
立ち退きは、周囲の約 5 キロ圏内に住む約 2 千世帯、9,110 人の住民が対象となる。 基本的に 1 人当たり 1 万 2 千元(約 21 万円)を補償するほか、経済的に困っている少数民族への上乗せなどもあるという。 中国ではこれまでも、長江流域の三峡ダムの建設に伴う大規模な立ち退きなどが実施されている。 (上海 = 金順姫、asahi = 2-26-16)
北京、世界で最も多く億万長者が住む都市に NY を上回る
【北京】 資産総額 10 億米ドル(約 1,100 億円)以上の「ビリオネア」が最も多く住む都市の調査で、中国の北京が 100 人となり、これまでトップだった米ニューヨーク市の 95 人を追い抜いてトップになったことが明らかになった。 中国を拠点に富裕層向け雑誌を出版し、中国の長者番付を毎年発表している「胡潤百富」は、24 日に発表した報告書の中で、北京が「世界におけるビリオネアの首都」に輝いたと述べた。 ニューヨークのビリオネアは昨年から 4 人しか増えなかったが、北京は 32 人の増加となった。 第 3 位にはロシアのモスクワが 66 人でランクインした。
胡潤百富の会長で調査主任のルパート・フーゲワーフ氏は、「中国は、成長の鈍化と株価の下落にもかかわらず、昨年、世界で最も多く新たなビリオネアを誕生させた国となった。 その主要因は、新規上場を背景としたものだった。」と述べた。 また、同報告書によると、中華圏のビリオネアは昨年から 90 人以上増え、568 人となった。 568 人の資産を合わせた総額は、オーストラリアの GDP に匹敵する 1.4 兆ドル(約 160 兆円)に上った。 さらに、40 歳未満のビリオネアに限ると、中国が全世界の 40% 余りを占めていた。 (AFP - 時事 = 2-26-16)
中国で小児科医が 20 万人不足
医大の学部生で 17 年間も募集せず
大学院でも「報酬低い」、「家族の復讐怖い」と不人気
中国政府・衛生和計画生育委員会(衛生と計画出産委員会、衛生委)は 18 日、2016 年度に大学の医学科の学部生小児科医育成コースの学生募集を 17 年ぶりに復活させることを明らかにした。 広東省紙の南方都市報によると、これまで大学院課程では小児科医コースがあったが、「収入が低い」、「治療が悪かったとして家族に報復されることが多い」などで人気がなく、現在では中国全国で小児科医 20 万人が不足しているという。
教育問題を所管するのは教育部なので、衛生委は同部に対して学部生小児科医育成コースの復活を要請し、同部と連携して関係する大学が同コースの開設することを促進するという。 中国では、小児科医不足の影響が深刻化している。 中国を代表する大都市である上海でも、児童 1,000 人当たりの小児科医は 0.2 人で、米国全国の児童 1,000 人当たり 1.6 人に比べて極めて少ない。 中国の全国平均では児童 1,000 人当たり小児科医は 0.23 人と、小児科医はさらに少ない。
また、上海の場合には小児科医の 70% - 80% が小児科専門の病院に勤務している。 米国では小児科医の 80% - 90% が、開業医だったり小さな診療施設で働いているるのとは対照的で、子どもが体調を崩した場合には「大病院」にまで足を運ばねばならない場合が一般的だ。 上海市の比較的小さな病院では、5 - 10 年も、新任の小児科医がやってこない例が多く、医師がいなくなったために小児科を廃止するケースもあるという。
医学部の大学院では小児科の専門コースを設けているが、学生には不人気という。 収入が少ない上に「報われない」との考えが強いからという。 医師として、子どもは意思疎通が難しく、「非理性的」な反応を示すことが多いという。 さらに、「小児科」とひとくくりにしても、実際に扱う病気は極めて多い点も、「職業」としては難しい面だ。
中国では、「治療が悪かった」として、家族が医師を激しく非難するケースが多い。 暴力事件もしばしば発生する。 子どもの病気の場合には症状が激変する場合も多く、さらに長く続いた一人っ子政策の影響で、「わが子を溺愛」する風潮も強まったので、トラブルはなおさら多いという。 長らく学部生小児科医育成コースの新入生募集をしなかった中国だが、例外的な存在として上海交通大学医学院(医学部)は 2012 年に小児科医コースを復活させた。 ただし、国の方針と矛盾しないように「臨床医学専門(児童科学分野)」とのコース名だった。
同コースは毎年 30 人程度を入学させたが、同大学の陳国強医学院院長(医学部長)は「小児科医の置かれた環境を変えなければ、卒業生の全員が本当に小児科を専業とするとは限らない。 逆に、30 人全員が小児科医になったとしても、実際の必要から見れば、遥かに少ない人数だ。」と、事態を憂慮する考えを示した。 (SearChina = 2-21-16)
香港ディズニー、大陸客 23% 減が「致命傷」 21 億円超の赤字に転落
香港メディアの明報などによると、香港ディズニーランドは 15 日に明らかにした 2015 財政年の決算報告で、売上高は前年比 6.4% 減の 51 億 1,400 万香港ドル(約 752 億 100 万円)で、最終損益は 1 億 4,800 万香港ドル(約 21 億 7,800 万円)の赤字だった。 入場者数は前年比 9.3% 減の延べ 680 万人だった。 中国大陸人客が前年比 23% 減だったことが大きく響いた。 香港人客は 14% 増だが、「穴を埋める」には至らなかった。
同年中に香港ディズニーランドを訪れた客のうち 41% が中国大陸人、39% が香港人、20% がその他の外国人などという。 また、併設するホテルの客室稼働率は 79% で、前年の 93% から 14 ポイント下落した。 香港旅遊発展局(香港観光局)では、2016 年に香港を訪れる人は前年比 1.8% 下落の延べ 5,827 万人と予測。 宿泊客の 1 人当たりの消費額は、2015 年の 7,235 香港ドルから 6,948 香港ドルに下落するとの予測だ。 また、上海ディズニーランドが 6 月に開園する予定であることも、香港ディズニーランドについては「逆風」になる可能性がある。
香港ディズニーランド・リゾートの金民豪・最高経営責任者 (CEO) は、売上高そのものは歴代 2 位の業績だったと説明。 アジアの周辺地区では娯楽施設の競争が激化していると説明し、大陸人客の約半数が年間パスポートを利用し、香港人客の 4 割が優待入場券を利用しており、定価で入場する人が 1 割程度しかいなかったことを明らかにした。
金 CEO は、香港客が 14% 増だったことは「きちんとした仕事をすれば、ニーズがある」ことを示していると説明。 香港ディズニーランドと香港全体の観光業の活性化は切り離せない関係があるとして、当局側にはビザ発給の条件緩和を望むとともに、東南アジア客の安定した成長は、今後も期待ができるとして、ウェブサイトを 7 カ国語体制として、園内には多言語を操れる「文化大使」を配置するなどの努力をするという。 (SearChina = 2-16-16)
違法・偽の金取引サイトが「雨後の竹の子」状態 中国当局が利用しないよう呼びかけ
新華網、中国経済網など中国の主要ネットメディアは 12 日、「最近になり、インターネット上で偽かつ違法な金取り引きサイトが多数出現している」と報じた。 正規の取引所である上海黄金交易所(上海金取引所)も、利用しないように呼びかけていると紹介した。 上海黄金交易所は 2 日に、同取引所の正式名称や略称である「金交所」を使った違法な偽サイトが出現しているとして、「利用した場合は、投資家は違法な金取引に参加することになる」と、注意を呼びかけた。
12 日の各社報道では、「違法な偽サイト」が出現した背景を、国際的な金価格の回復傾向や、春節(旧正月)期前後には金取引が活発になる季節性にあると解釈。 違法サイトの数については「台頭」と表現し、増加していることを示唆した。 記事はさらに、「上海黄金交易所は政府が許可した中国における唯一の金の取引所であり、「国内のその他のいかなる場所も、機関も、個人も、金取引所や金取引のプラットフォームを設けることはできない」と強調。
12 日発表の記事によると、上海黄金交易所の関係者は一般投資家向けに、「正規の商業銀行や取り扱い資格を持つ金融業者が販売する金関連の金融商品を購入してほしい。 違法な商品の場合、レバレッジ率が高く、投資家に大きな損失をもたらす恐れがある。」と呼びかけたという。 (SearChina = 2-13-16)
◆ 解説 ◆ 上海黄金交易所の 1 日の発表と、12 日に始まったメディアの報道には、微妙な違いがある。 上海黄金交易所はあくまでも「だまされないように」との注意喚起だったが、12 日の報道では「違法な業者を利用するな」に力点が置かれている。 12 日の報道は、「金商品を違法に扱っている業者」と勘付きつつも、ハイリターンを期待して購入する投資家の多いことを示唆していると言える。
日本でも、資金繰りで追い詰められた事業主などが「違法な金融業者(ヤミ金融)」を利用することは、時おり伝えられている。 しかし、資産を増やすことが目的の投資家が、「政府の権威よりも目の前の利益」を重視するようになれば、金融市場の秩序維持にとっては「由々しき事態」と言える。 中国には海外との違法な送金業務を行う「地下銀行」の問題があるが、地下銀行が隆盛になったのは、正規の銀行よりもサービスや利用料金で有利だったからだ。 中国経済では、「政府の規制をかいくぐる」事例の多発が問題を複雑化することが珍しくない。
春節 オートバイでの帰省もピークに 中国
中国では、7 日から旧正月の春節に合わせた大型連休が始まります。 海外旅行に行く人たちの出国ラッシュが本格化する一方で、オートバイに乗ってふるさとを目指す出稼ぎ労働者たちの帰省もピークを迎えています。 新年を旧暦で祝う中国では、旧正月の春節を迎えるのに合わせて、大みそかにあたる 7 日から 13 日まで 1 週間の大型連休となります。
中国各地の空港は、連休を海外で過ごそうという人たちで混雑し、中でも人気が高い日本に向かう便は各社ともほぼ満席になっている一方、国内ではふるさとで家族とともに新年を祝おうという労働者たちの帰省ラッシュがピークを迎えています。 このうち、南部・広東省では、列車やバスの混雑を避けようと多くの労働者たちがオートバイでふるさとを目指し、道路がオートバイで埋め尽くされました。
地元メディアによりますと、その数は実に 40 万台にも上り、家族へのおみやげが入った大きな荷物を載せて数百キロの距離を 1 人で運転するため、事故が後を絶たないといいます。 このため、道路脇には長時間の運転で疲れた人たちが休めるように休憩所が設けられ、ボランティアの若者が無料でかゆやお茶をふるまっています。 また、バイクメーカーも無料で修理や点検を行っていて、労働者たちが無事にふるさとまでたどり着けるよう支援する態勢が整備されていました。 ボランティアに支えられ、家族との再会を目指す出稼ぎ労働者のバイクの旅は、中国の春節の風物詩の 1 つになっています。 (NHK = 2-7-16)
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春節の大移動、数万人が駅から動けず 雪で列車遅延 中国
旧正月の春節を控えた中国南部広東省の広州駅で 2 日、雪のため 22 本あまりの列車に遅れが出て、数万人の帰省客が足止めされた。 広州鉄道では乗客 3 万 8,000 人が待たされていると説明。 一方、人民日報は同駅で身動きできなくなった人数を 10 万人以上と伝えている。
春節を控えた帰省シーズンは 1 月 24 日から始まり、約 40 日間続く。 この間にのべ 29 億人の移動が予想され、このうち 3 億 3,200 万人は列車を使う見通し。 広州鉄道駅は初日だけで 13 万人が利用していた。 広州市の公安当局は、駅に配備する警官を 1,300 人増員して対応に当たった。 広州鉄道は列車の運行本数を増やすなどの対応を行っていると説明。 乗客に対しては列車の出発予定時刻の 3 時間以上前に来ないよう呼びかけ、インターネットで時刻表を確認するよう促した。 (CNN = 2-3-16)
「救助活動者表彰は恥」 長江事故の地元政府に批判殺到
中国・長江で昨年 6 月に 442 人が死亡した客船転覆事故で、地元の湖北省政府が 1 月下旬、救助作業にあたった多数の機関や個人を表彰する計画を発表したところ、「救助できたのはわずかなのに表彰なんて恥知らずだ」などと批判が殺到。 政府はホームページから名簿を削除した。 事故後、当局は潜水士らを大量動員して救援や捜索活動を展開。 上流にある三峡ダムの水量も抑制して総力救助をアピールした。 しかし、生存者は 12 人にとどまった。 自力で岸に泳ぎ着いた人もおり、救助作業で助かった人はさらに少なかったとみられる。
省政府は「先進的な活躍をした」として、潜水チームや警察のほか、政府の関係部門など 99 機関と 253 人を表彰対象として発表。 しかし、ネット上では「責任追及はこれほど大々的にやっていない」、「公務員が尽力するのは当たり前。 役人に恥や道徳はないのか。」といった批判が噴出した。 ただ、政府系の地元紙「長江日報」は「責任追及と英雄の表彰は矛盾しない。 危険を顧みずに力を尽くした人たちやボランティアの献身ぶりは称賛に値し、社会を明るくする。」と擁護している。 (広州 = 延与光貞、asahi = 2-7-16)
巨大化する中国の消費市場 多様な消費価値観
■ 「世界の工場」から「世界の市場」へ
中国政府は、経済が高度成長から中程度の高成長への移行段階にあることを示すニューノーマルを意味する「新常態」というキーワードを中国経済を論議する際に使い始めている。 このことは中国政府が成長率が下がることが不可避あるいは望ましいと考えているということでもある。 これに伴って GDP 成長の牽引役は、「世界の工場」としての「輸出」から、中間層の爆発的増加による「世界の市場」としての「消費」にとって代わられようとしている。 今後、中国の消費市場は紆余曲折を経ながらも確実に成長していくことが見込まれている。
■ 老後への不安が解消されれば消費性向は高まると予想される
中国は、GDP の構成比中、現時点で個人消費は 3 割台でしかない。 因みに日本は約 6 割、米国は約 7 割を占めている。 中国が低い最大の理由は、「老後の安心」を保障する養老保険の対象範囲が一部大都市労働者だけに限定されていたため、老後への不安が支配的となり、貯蓄性向が異常に高かったことにある。
そこで中央政府は個人消費の活性化を図る目的で、農民工など地方からの出稼ぎ労働者が複数の都市を転々として定年退職後に故郷の田舎に戻っても、各地における養老保険の累積納付データーをもとに養老保険を適切に受給できるように、制度改革を推進している。 この制度改革は長期にかかるとしても制度改革の進展と国民的認識が広がり、老後への不安が徐々に解消されるにつれて、貯蓄性向が低下して、消費性向が高まると予想される。
■ 勃興する中国中間層のライフスタイル
近年の中間層消費者は、
(1) 多様な消費価値観を持ち、(2) インターネットが地域、年齢に関係なく幅広く浸透しつつあり、(3) 外資系ブランドに対しても冷静な価値判断をするようになっている。 特に、インターネットの浸透は、スマートフォンが生活必需品レベルの保有率に達したことを背景に、この数年で劇的に変化したライフスタイルである。
購買行動においても、アパレル・ファッションについては既にインターネット通販 (Electronic Commerce = EC) が最も利用されるチャネルとなり、ほかのカテゴリーでも、徐々に EC 化が進んでいる。 スマートフォン普及とインターネットの定着に代表されるような、中間層のライフスタイルの劇的な変化への対応が、今後の市場拡大のカギを握るであろう。
■ 巨大市場中国と中国人を深く理解するよう努力すべき時期に迫られている
中国の GDP が日本のそれを抜いたのは 2010 年である。 しかし、そのわずか 2 年後の 2012 年には、中国の GDP の水準は約 8.22 兆米ドルと、日本の約 5.96 兆米ドルの約 1.38 倍までに成長している。 わずか 2 年で、40% 近い規模の乖離が生じているのである。 このように日本よりはるかに大きな消費市場が飛行機でわずか 2 - 3 時間の近さにあるということは日本企業にとって無視できない厳然たる事実なのである。 我が国は中国と中国人をもっと深く理解し向き合うように努力することが必要な時期に迫られていると思う次第である。 (水野隆張・日本経営管理教育協会営業部長、SearChina = 2-5-16)
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